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「何よりも“鮮度”を大切にしたい」
役を演じる上での心構えとは

撮影:宮城夏子
撮影宮城夏子

―――脚本を読む上で大切にしていることは何ですか?

「第一印象を大切にしています。初めて読む時と、十何回目に読んだ時の印象は違いますし、その都度変わってくるので、最初に台本を読んだ時の新鮮な感情は大事に覚えておくようにしています」

―――メモを取るというよりかは、心に留めておくような感じでしょうか?

「メモをすることもありますが、どちらかと言うと心に留めておくことが多いです。言葉にすることも大事だとは思いますが、その時感じたことと、後から書き留めた言葉を見て思うことは一致しないことが間々あるので。そこは難しい部分です。

個人的に感情や思考を言葉にすることは好きなのですが、言葉に引っ張られると変わってきちゃうのかなと」

―――言葉って難しいですよね…。確かにその時の気持ちによって、受け取り方が変わると思います。役を演じる上で大切にしていることは何ですか?

「今日もそうなんですけど、作り過ぎないようにしています。今日もどんなことを訊かれるのかなと、企画書は軽く目を通したんですけど、何よりも“鮮度”を大切にしたくて。

役を演じる上でもそうですし、生きていく上でも同じだと思うんですが、上手い役者じゃなく、いつまでも素人というか、初めて役者をやる気持ちでいたいなと思っていて。

やっているうちに慣れてしまう部分もあると思うんですけど、なるべくナチュラルに自分を通して役を表現することを大切にしたいなと思います」

―――佐々木さんは役によって髪の長さや、髭の長さなど、ビジュアルの違いが顕著なのですが、ご自身で考えているのですか?

「いえ、ビジュアル面に関しては監督のご指示に従っています。監督のイメージを大事にしたいので、自分からビジュアルを作り込むようなことはしていません」

―――監督から見た佐々木さんの個性やビジュアルが画面に投影されるわけですが、ご本人からすれば「新しい自分に出会う」という感情もあるのでしょうか?

「それはありますね。工藤監督によると、僕は歯を食いしばる癖があるみたいで。『それが良い』って言われたことがあります(笑)。自分では『そんなことしてる?』って思うんですけど。

スクリーンに映る姿を通して自分を発見することは多々あります。逆に言うと、自分のことを全くコントロールできていないなと思います」

―――そこが役者・佐々木詩音の魅力だと思います。佐々木さんは先ほど、役を演じる上で「自分に役を引き寄せる」と仰っていましたね。今まで演じた役で最も自分とかけ離れていたのはどんな役でしたか?

「自分と似ている役の方が少ないかもしれないです。最近になって自分に近い役をいただけるようになりましたが、最初の頃は『こんな性格じゃないんだけど』と思うことが多く、そのちぐはぐさがむず痒い部分がありました」

―――吉川鮎太監督作『DRILL AND MESSY』 (16) はご自身とはかけ離れていると仰っていましたね。

「全然違いますね。僕には変わった性癖もないですし、モノづくりをしている役柄でしたが、僕は自分から何かを編み出すようなことはしない性格なので」

―――そのように自分と正反対にいる役を演じる時は、どのようにアプローチしますか?

「その当時出来ていたかは分からないのですが…。今だったら、演じるキャラクターの見えやすい部分だけではなく、裏側や左右にあるものを想像するようにしています。

役を立体的に、あるいは球体的に捉えると言いますか。『この役はこうだ!』と決めつけるのではなく、疑問を大事にして役を知ろうとする意識を大事にしています」

―――役を把握してしまうと、それこそフレッシュさが失われてしまう…。

「自分の中で固めるのは違うと思うんです。深く考えているようで考えていないこともあるんですけど…」

―――感覚的な領域なのかもしれませんね。先ほど“左右”と仰ったのが面白いです。“裏”はキャラクターの歴史的な部分、“左右”はその人を取り囲む人間関係や空間のことを表しているのかなと思いました。

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