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「自分の心に真っ直ぐにいられるようにしてあげたい」
表現者としての今後の展望を語る

撮影:宮城夏子
撮影宮城夏子

―――佐々木さんは音楽活動もされていますね。俳優を始める前から音楽活動をされたかったそうですが、どのように音楽と関わっていましたか?

「僕、大阪出身なんですけど、小さい頃からFM802のラジオを聞いていたんです。最近の曲からちょっとニッチな曲まで、様々な音楽が流れるんですけど、それを朝から晩まで聞いていたので、音楽はずっと身近に感じていました」

―――ご自身で楽器を演奏するよりは、聴くことで音楽と触れ合っていたんですか?

「小学校まではそうだったんですけど、中学生にもなると自分で歌ったり、バンドを組みたいと思うようになって。親に『ギターが欲しいんだけど』と相談したら『買えない』と言われて…。

そこで知り合いに相談したところ使っていないギターがあるからということで譲ってもらい、そこからコードも知らぬまま弾き語りの練習をし始めました」

―――青山真治監督も音楽がとてもお好きだったそうですね。書籍『青山真治クロニクルズ』によると、映画の座組のことをバンドに見立てていたそうですが、佐々木さんは“青山イズム”を受け継いでいるのかなと思いました。

「在学中は音楽について話すことはそこまで無かったのですが、それはあるかもしれないです」

―――役者や音楽、あらゆる表現活動をなさっていますが、表現したい核となる感情や想いはありますか?

「作ったものじゃなく、“鮮度の高いナマの感情や感覚”をできる限り表現したいなと思っています。

映画や音楽は、カメラやCDなどの媒体を挟んでいるので、そこで一度鮮度が落ちてしまう。だから媒体を挟む前はできるだけフレッシュさを保った状態にしたいなと。

そして観ている人、聴いている人に届いてほしいなと思って創作活動しています」

―――佐々木さんのお言葉を聞いていると、人間も表現も“ナマモノ”なんだなと思わされます。大学卒業後はフリーランスで活動されていますね。

「事務所には入れるものなら入りたいんです(笑)。スケジュールの管理やギャランティーの交渉などを個人で行うのはとても難しいので。また、フリーだとオーディションがないので、Twitterで見つけたものに応募しようとはするのですが、あまり触手が伸びないと受けないこともあって…。

事務所に所属すると、自分では触手が伸びないことにも挑戦できるので良いなと思う反面、やりたくない仕事でもやらないといけないとなった時、自分もしんどいし、事務所にも迷惑をかけるし、完成した作品を観てくれたお客さんにも失礼だなと思うので難しいですね。自分が事務所に入って上手くやっていけるというビジョンが浮かばなかったので、ずっとフリーでやっています。

でもフリーは苦しいこともありますし、オーディションもない分、空白期間が多くなってしまうので、『なんでここにいるんだろう』と考えることもあるのですが、それでも自分の心に真っ直ぐでいられるような環境に身を置きたいという思いが強いです」

1時間半に及ぶインタビューでは、一つ一つの質問に真摯に答えてくれた。俳優として圧倒的な熱量で作品と向き合い、役を生きる姿は見るものを惹きつける。儚く危なげで、でも凛とした芯を持ち、柔らかく優しく愛を持って直向きに人生を全うする…そんな印象を強く感じた。

出演作は主にU-NEXTにて配信されているので、是非チェックしてみてほしい。

(取材・文:福田桃奈)

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