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「独特の“匂い”を感じる映画」
名優レスリー・チャンの晩年の作品

『ブエノスアイレス』(1997)

撮影:宮城夏子
撮影宮城夏子

―――こちらの作品は『裸足で鳴らしてみせろ』の部屋のセット内にDVDがあった気がします。

「ありましたね。あの年代のアジア映画特有の色もそうですけど、“匂い”を感じる。体験したことがなくても、それを自分の身近なものに感じさせてくれるような、ちょっとしたトリップ体験みたいな感覚にさせてくれる映画だなと。

あと、僕は悩んでいる人に凄く惹かれてしまうんです。悩みすぎて人生の幕を早く閉じてしまう人や、儚さや危なげな雰囲気を持っている人や役者さんが好きで、そういう部分に惹かれますね」

―――レスリー・チャンの晩年の作品でもありますね。男同士が手を取り合ってダンスするようなシーンがありますが『裸足で〜』の撮影前に見返しましたか?

「はい。とはいえ、『ブエノスアイレス』では男性同士の恋愛関係を描いていますが、『裸足~』では「2人はこういう関係だ」と枠に当てはめるのではない形で、2人の身体のぶつかり合いを描きたかった。

『裸足で〜』の2人は性的に惹かれ合っているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。当人たちにとっては普通なことだし、無理やり関係性を規定する必要はないと思いました。ただ、役を演じる上でヒントを得ることができると思い、見返しました」

―――『裸足〜』は、ある意味で『ブエノスアイレス』よりも繊細な関係性を描いていると思いました。

「ありがとうございます」

―――あと『ブエノスアイレス』は破綻している映画ですよね。そこが魅力です。完成度よりも、瞬間ごとの鮮度が素晴らしい作品です。

「完璧すぎる作品よりも血の流れを感じられる作品が好きなんだと思います」

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