話題性抜群にも関わらず興行収入はわずか1億円
迫力ゼロのCG表現にガッカリ
『鉄人28号』(2005年)
原作:横山光輝
監督:冨樫森
脚本:斉藤ひろし、山田耕大
出演:池松壮亮、蒼井優、薬師丸ひろ子
【作品内容】
小学6年生の金田正太郎は、幼い頃にロボット工学者の父・正一郎を亡くし、母・陽子と暮らしている。ある日、街に巨大ロボット“ブラックオックス”が現れ、東京タワーを破壊した。
“ブラックオックス”を送り込んだのは、コンピューター会社・KOKの元会長で、妻と息子を亡くした悲しみから、全てを壊そうと企んでのことだった。
正太郎は綾部という老人に、正太郎の祖父と父が研究していたロボット“鉄人28号”の操縦を任せられる。しかし鉄人28号は、無残にもブラックオックスに破壊されるのであった。
その後、正太郎は強化された鉄人28号で、再びブラックオックスに立ち向かう…。
【注目ポイント】
テレビ放送初期に実写化作品が製作されたが、その後はアニメ化しかされていなかった『鉄人28号』を、現代的設定やCG技術を活かして実写映画化。
東京に謎の巨大ロボット、ブラックオックスが出現。金田正太郎は、綾部と名乗る老人から、ロボット工学の第一人者だった父・金田正一郎が開発していたという鉄人28号の操縦を任せられる。
正太郎は何度も挫けつつも、若き天才工学者の立花真美らと共に、ブラックオックスに闘いを挑む。
日本が誇る、元祖巨大ロボットアクションを実写映画化!と話題十分だったが、製作費約10億円に対し、興行収入はわずか1億円。予想以上に大コケしてしまい、黒歴史どころか、そんなもの無かったかのような存在になっている作品。
とはいえ、今見るとキャストは豪華で、主演の金田正太郎役には、『ラスト・サムライ』で注目されていた池松壮亮。現在はあんなにセクシーな壮亮サマの少年時代をたっぷり愛でることができるのは本作だけ。
そして、天才工学少女を演じた蒼井優も可憐なベレー帽姿で、少年がほのかに憧れるお姉さんポジションを好演。
このふたりの関係を軸に、全編にジュブナイルテイストが漂っており、少年SF活劇としてみればそこまで悪くない作品のように思える。
しかし、大事なロボ・バトルシーンが、鉄人28号やブラックオックスのCGが妙にツルっとしていて迫力ゼロ。あえてレトロ感を出すように仕上げたのかもしれないが、それにしてもな出来栄えだ。
素直に子供向けに作ればいいのに、元祖鉄人世代のノスタルジィが振りかけられているので、結果的に誰にもハマらない作品になってしまっている。
監督の富樫森は、過去に青春映画の傑作『ごめん』(2002)を手がけている。CGなどに頼らない、役者の伸びやかなアクションを捉えることに長けた作家だ。その点、本作は題材と作家的資質の不幸なすれ違いが生んだ失敗例と言えるかもしれない。