担任教師を流産させようとする生徒たち…。実際にあったおぞましい事件を映画化
『先生を流産させる会』(2011)
監督:内藤瑛亮
脚本:内藤瑛亮
出演:宮田亜紀、小林香織、高良弥夢、竹森菜々瀬、相場涼乃、室賀砂和希、大沼百合子
【作品内容】
2009年に愛知県で実際に発生した事件をモチーフにした作品。
内藤瑛亮監督初の長編映画でもある。妊娠中の中学教師サワコ(宮田亜紀)に「あいつセックスしたんだよ」と嫌悪感を示す不良グループのリーダー、ミヅキ。ミヅキはグループの一員であるフミホらと「先生を流産させる会」を結成。
彼女たちはサワコを流産させる目的で給食に異物を混入させたり、椅子を細工したりする。その後も嫌がらせはエスカレートしていく…。
【注目ポイント】
なんといっても、まず心をざわつかせるのは「先生を流産させる会」というおぞましいネーミングだ。多感な思春期の中学生の思考に驚愕するばかりだが、もちろん自分も通ってきた道ゆえに一歩間違えば、誰もが「流産させる会」のメンバーになり得ていたかもしれない恐ろしさがある。
薬品を入れられた給食を吐き出した担任教師・サワコは、犯人のミヅキを厳しく叱責する。しかし、ミヅキは反省するどころか、さらに嫌がらせをエスカレートさせていくのだ。そんな女子生徒の行動に輪をかけてサワコを悩ませるのが、モンスターペアレント。
我が子を犯人扱いされた母親はサワコに「恥を知れ」と怒鳴る。ひと騒動あった後も、「まだ終わっていない」と話すミヅキの笑みにはゾッとしてしまう。思春期とはいえ、誰もが持つ人間の危うい心理状態を突きつける作品である。
また、初の映画出演となった少女たちの演技が、その無垢な悪意をさらに引き立てる。彼女たちの悪事をどこか淡々と描く演出も相まって、言い表せない不快感が終始続く作品だ。公開当初、賛否両論を巻き起こした本作。人間の命や微妙な心理などのメッセージが読み取れる映画である。