皮肉屋と見せかけて、実は誰よりも夢と恋にまっすぐな少年
『耳をすませば』(1995)天沢聖司
声優:高橋一生
【作品内容】
中学3年生の月島雫は、父の勤務する図書館で本を借りるのが趣味である。彼女が借りた本の貸し出しカードには、ことごとく「天沢聖司」なる人物の名前が記載されている。雫は聖司がどんな人物なのだろうかと想像を膨らませる。
【注目ポイント】
聖司は主人公の雫と同じ中学校に通っており、頭脳明晰でクールな性格、しかもハンサムな少年だ。読書家なだけではなく、バイオリンが得意。バイオリン職人になる夢を抱いており、中学卒業後はイタリア留学を視野に入れている。
インテリで紳士的な一方で、毒を含んだ率直な意見を物怖じせずに発言する側面もある。同学年である雫とは初めはぶつかりながらも、やがて惹かれ合い、進路に迷う雫の生き方に影響を与え、創作意欲を刺激する存在だ。
読書好きの雫は、いつも自分に先んじて同じ本を借りていた「天沢聖司」という名前を認識し、意識していた。が、後半になって実は聖司の方が先に雫の存在に気が付いており、雫を意識させたくて本を先に借りていたという、どんでん返しが待っている。
前半の余裕そうな上から目線に見えた態度が、実は気になる女の子に素直になれずにいたという、普通の男子中学生らしい一面を持っていたのだ。クライマックス、朝陽を見ながら雫にプロポーズしOKをもらい、思わず抱きしめて「雫、大好きだ!」と叫ぶシーンは、それまでの素直じゃない過程を見てきた観客の目頭を熱くさせる。
聖司の声を担当したのは、当時14歳の高橋一生。当時、児童劇団に所属していた高橋にとっては、声変わりする寸前に演じた貴重な作品となっている。高橋の現在の活躍は知られている通りだが、今となっては、聖司のキャラクターにピタリとハマっており、まさに名演と呼ぶほかない。