最も魅力的なジブリ映画の乗り物は? 素晴らしき乗り物シーン5選。宮崎駿作品の生命線…こだわり詰まったエピソードを解説
真夏の青空に浮かぶ入道雲から「スタジオジブリ」作品を思い起こす人も多いのではないだろうか。ジブリ作品と言えば実にさまざまな乗り物が登場するのが特徴のひとつ。代表的なところだと飛行機だろう。今回は、ジブリ映画に登場する格好いい乗り物を5つセレクト。架空の機体から、実在する車、身近な自転車まで幅広く紹介する。(文・ZAKKY)
——————————-
誰しも一度は”風使い”に憧れる
『風の谷のナウシカ』(1984)メーヴェ
【作品内容】
舞台は、世界最終戦争「火の七日間」によって、文明が滅びた1000年後の地球。
人類の姿が消え、荒廃した大地は、「腐海」という有毒なガスを発する菌類の森に姿を変えていた。地球の覇権は「腐海」に住む巨大な昆虫「蟲 (むし)」が握っており、わずかに生き延びた人類は「蟲」の脅威のもと、苦しい生活を強いられていた…。
【注目ポイント】
主人公のナウシカが愛用する架空の小型飛行用装置であり、ドイツ語で「カモメ」を意味する。劇中では、かつて存在した工業大国エフタル王国で用いられ、一般的に使用されていた移動手段であったという設定。後にナウシカを含めた「風使い」が主に使用する乗り物となる。
エンジンを備えており、風の流れ等を利用して滑空する方法が基本操縦法。その推進力は上昇や高速飛行時のみに使われ、「身を任せて風に乗るための乗り物」という特性がある。
劇中では冒頭から終盤まで、メーヴェはまさにナウシカの手足のような存在であり、活躍シーンは枚挙にいとまがないが、トルメキア軍が使用する戦闘艦「コルベット」との戦いのシーンは特に印象的だろう。
ペジテ残党の乗る輸送船を襲撃するコルベット。メーヴェで脱出したナウシカを仕留めるべく追撃を仕掛けるコルベットと、それを避けるナウシカの戦闘シーンは、思わずこぶしを握るほどの迫力のあるシーンだ。久石譲によるBGMが、より緊迫感を引きたてる。
さらにクライマックスシーンでナウシカが世界を救った後に、その姿を見守るように空を滑空する主が乗っていないその姿には、もはやメーヴェ自身の意思すら感じられる名シーンである。
メーヴェ自体は架空の機体であるが、2003年よりメディアアーティストの八谷和彦たちにより、メーヴェをモチーフとした「パーソナルジェットグライダー」の製作、飛行実験を行っている。2014年には公開飛行試験が行われ、YouTubeなどの動画でも、そのリアルさが話題となった。架空の乗り物を、現実に再現しようという情熱を人に与えるほどの魅力が、ジブリ作品にはあるのだ。