ホーム » 投稿 » コラム » 日本映画 » 最も魅力的なジブリ映画の乗り物は? 素晴らしき乗り物シーン5選。宮崎駿作品の生命線…こだわり詰まったエピソードを解説 » Page 2

カッコイイとはまさにこのこと
実在の飛行艇がモデルの赤き暴れ馬

『紅の豚』(1992)サボイアS.21

© 1992 Studio Ghibli・NN
© 1992 Studio GhibliNN

【作品内容】

真っ赤な戦闘飛行艇“サボイア”を操る豚のポルコ・ロッソは、「紅の豚」と呼ばれ、空中海賊から恐れられているパイロット。かつては人間の姿をしていたが、自らに魔法をかけ、豚の姿になった。

人間だった頃はイタリア空軍のエースだったが、現在は空賊退治で賞金を稼ぎながら、アドリア海の小島で気ままに暮らしている。

ある日、幼馴染のジーナが営むホテル・アドリアーノを訪れたポルコは、空賊が雇った用心棒・カーチスに出会う。カーチスは、ポルコを倒すことを目論んでいた…。

【注目ポイント】

「飛べない豚は、ただの豚だ」の名セリフでお馴染みの主人公、ポルコ・ロッソの乗機であるサボイアS.21。

1920年代に1機のみが試作された戦闘飛行艇で、安定性が悪く乗りこなせる人間がいなかったため、倉庫に保管されていた機体をポルコが購入した。

サボイア(サヴォイア)は実在したイタリアの航空機メーカーであり、爆撃機などを製造していた会社である。S.21の型番がつけられた飛行艇も実在したが、『紅の豚』に登場する「サボイアS.21」とは外見が大きく異なる。その原型のモデルは、宮崎駿が小学生のころに見た「マッキM.33」の写真で、当時の記憶を頼りにデザインしたと宮崎駿は発言している。

本機はカーチスに一度敗れ大破するも、飛行艇製造会社「ピッコロ社」に持ち込まれ、ヒロインの一人であるフィオの設計のもと改修される。社長であり、フィオの祖父でもあるピッコロのおやじは「新造した方が早い」と言ったが、ポルコはこの機体にこだわった。

正式名称は「サボイアS.21試作戦闘飛行艇」だったが、後に改修後の形状で模型化するにあたり、改修後の形式を「サボイアS.21F」へと変更された。この”F”は設計を担当したフィオの頭文字にちなんでいる。

劇中を通して、美しいアドリア海の上空を真っ赤なサボイアS.21が駆けるさまは、一貫して爽快であり、あまりにも痛快だ。

宮崎駿にとって幼い頃から身近な存在であった飛行機はとても重要なオブジェクトであり、飛行機への情熱は創作のルーツといっても過言ではない。近作の『風立ちぬ』(2013)や『君たちはどう生きるか』(2023)でも飛行機は重要なモチーフであり続けている。

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!