舞台出身の役者がみせるアドリブ
阿部サダヲ『死刑にいたる病』(2022)
原作:櫛木理宇
監督:白石和彌
脚本:高田亮
出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、宮﨑優、鈴木卓爾、佐藤玲、赤ペン瀧川、大下ヒロト、吉澤健、音尾琢真、中山美穂
【作品内容】
大学生の筧井雅也(岡田健史)は、24件の殺人容疑で逮捕された連続殺人鬼・榛村大和(阿部サダヲ)から、自身の犯した罪が1つだけ冤罪であることを告白され、自分が犯していない罪について、誰が真犯人かを調べてほしいと頼まれる。
雅也は中学生の頃、近所でパン屋さんを営んでいた榛村に恩を感じていたため、調査を引き受ける。
【注目ポイント】
コメディからシリアスまで、幅広く演じ分ける阿部サダヲ。舞台やドラマ、CMなど様々な媒体で活躍する阿部は、よく舞台でアドリブをすると聞く。
長年、生の舞台で培った勘や反射神経から繰り出されるアドリブで、客席を大爆笑の渦に巻き込む。一方、本作では、目の奥に闇が広がる凶悪殺人鬼を演じた。
そんなシリアスな雰囲気の漂う作品で、アドリブを繰り出すことなんてできるのかと思うが、本作でもその対応力が発揮されたようだ。
そのシーンは、阿部サダヲ演じる榛村大和が営むパン屋さんに、中学生時代の筧井雅也がパンを食べに来る場面で、ベーコンレタスサンドにオレンジジュースをサービスするシーン。本来台本にはない、「B.L.T.O」というセリフが発せられたそうだ。
そうしたアドリブは、本番中でも常に自分の役としての立場や、相手役との距離などを分析していないと出てくるものではない。その場に最適な言葉や行動を選び取ることはそう簡単ではなく、先述した通り、長年培ってきた反射神経の賜物である。
本作では、優しい顔の裏に悪魔の姿を隠した、観る者をゾワゾワとさせる阿部サダヲの芝居を観ることができる。