ゾンビよりもブラピの方がゾンビ
『ワールド・ウォー Z』(2013)
上映時間:116分
原題:World War Z
製作国:アメリカ
監督:マーク・フォースター
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン、ドリュー・ゴダード、デイモン・リンデロフ
キャスト:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ダニエラ・ケルテス、ジェームズ・バッジ・デール、ルディ・ボーケン、マシュー・フォックス、ファナ・モコエナ、デヴィッド・モース、エリス・ガベル、ピーター・キャパルディ
【作品内容】
元国連職員のジェリー(ブラッドピット)は、妻と2人の娘を学校に送るために、車に乗っていた。しかし、道は渋滞し、いつもとは違うただならぬ様子だった。
街はゾンビウイルスに侵され、次々と人が襲われる中、ジェリーはアルコール中毒者や身体が欠損した軍人などが襲われないことに気づき、事態収束へ向けて動き出す…。
【注目ポイント】
映画『チャーリーとチョコレート工場』や『キック・アス』『ミナリ』などのヒット作を手がけた、ブラッド・ピットが所有する映画制作会社・PLAN B製作の本作。本作の一番の見どころは、何と言っても撮影規模の大きさだ。
冒頭の何千人といった人々が混乱の中で逃げ惑うシーンは、これから始まる物語が困難を極めることを示唆している。都会で一度混乱が起こってしまえば、車や建物が爆発し、全てが凶器に変わる。
そして、本作ではゾンビに噛まれた者は12秒で転化してしまう。ゾンビになった者は、自分がかつて人間だった頃のことを忘れたように暴れまわり、たった一回の頭突きで車のフロントガラスを割るほどタフでありかつ凶暴だ。
さらに、高い壁に囲まれた安全な街に、ゾンビが連なって登ろうとしている衝撃的なシーンは、まるで虫が集まっているかのような気持ち悪さを感じさせる。
グロテスクな描写はそう多く描かれていないが、大勢の人がパニックに陥るシーンは、リアリティーがあって本格的なスリルが味わえる。
だが、万人受けしそうな反面、コアなファンからするともう少し捻りがほしいと感じるところも。物語は、展開がサクサク進むため飽きずに見ていられるが、少々強引なところもある。
また、ブラピ演じる主人公への作り手の忖度が甚だしく、絶対にやられると思われる瞬間も不思議と生きており、観終わった後、「ゾンビよりもブラピの生命力の方が凄い…」という感想を抱かざるを得ない。とはいえ、ゾンビ映画は友達とツッコミを入れながら、楽しく観るという側面があるのも事実。その点、本作は誰が観ても楽しめる一作に仕上がっている。