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トンボのプロペラ自転車の名シーンをまさかのオマージュ

『魔女の宅急便』(1989)


出典:Amazon

監督:宮崎駿
脚本:宮崎駿
出演:高山みなみ、佐久間レイ、戸田恵子、山口勝平、信沢三恵子、関弘子、加藤治子、三浦浩一

【作品内容】

宮崎駿監督による『魔女の宅急便』。主人公のキキが親元を離れ、遠く知らない街で魔女として独り立ちする姿を描くアニメ映画。

【注目ポイント】

© 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
© 1989 角野栄子Studio GhibliN

先のページでは、鶴見中尉と映画『スカーフェイス』のトニー・モンタナを比較したが、先述のとおり、鶴見中尉は頭に重傷を負ったことで、情緒不安定となった。しかし元は実直な軍人。原作を読むと事故の前はかなりの男前だったことが分かる。

そんな美男子だった若き日の鶴見中尉が登場するエピソード(20巻199話「鯉登少年の救出」)で、オマージュが捧げられているのは、スタジオジブリの名作『魔女の宅急便』だ。

陸軍に所属する若き鶴見は、今後の計画(金塊強奪戦)に向け、海軍を思うがままに動かせる人と仲良くしておく必要があり、海軍の司令官・鯉登平二少尉の息子(後の第七師団・鯉登音之信)を救出することで、取り入ろうとする。

この救出シーンで引用されているのが、トンボのプロペラ自転車の後ろに乗ったキキが、地面スレスレまで体を傾けてカーブを曲がる、あの名シーン。

鯉登平二少尉がトンボ役、鶴見中尉がキキ役となって、プロペラ自転車ではなくバイクにまたがり、同じポーズをしている。

漫画『ゴールデンカムイ』は、数多の映画作品にオマージュを捧げているが、この場面は、作者の遊び心がひときわ強く感じられる。とはいえ、シチュエーション自体は、子どもの誘拐と、命の危険が迫る中救出に向かうといった緊迫したもの。

シリアスなシーンを、ジブリ史上最も爽やかな作品を引用することで軽やかに魅せる。また、そうした緩急をつけた演出は、決して読者を置き去りにさせない。この場面は、作者・野田サトルの素晴らしい手腕が存分に堪能できる格好の例と言っていいだろう。

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