スター不在、予算不足、CG使用なし。それでも名作になったワケ
とはいえ、本作の予算1,800万ドルでは、『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』(2022)のダニエル・クレイグも『ドント・ルック・アップ』(2021)のレオナルド・ディカプリオも雇うこともできない。
低予算で作られた本作が、なぜ30年もの長きにわたり多くの人々を惹き付けるのか。その理由としてまず思いつくのは、主人公マコーレー・カルキンの自然体の魅力だろう。しかし、おそらく最大の要因は、ハリーとマーヴのおマヌケコンビによる映画史上最も素晴らしく、最も面白い「スタントワーク」にあると考えられる。
監督のコロンバスは、本作のスタントを、現実感のある、リアルなものに感じさせることの重要性を強く意識していた。
エアガンによる金的攻撃や、ツリーの飾りを使ったまきびし、そして、家のドアを開けた瞬間に作動するバーナー―。ケビンが仕掛けるイタズラ後頃満載の仕掛けの数々は非情に現実的で、ホームセンターなどで購入できる道具で実践されている。
もし、本作のスタントが『ワイルド・スピード』のようにCGI技術を駆使した大仰なものであったら、あるいは、階段を駆け上がる泥棒のハリーとマーヴが、ペンキ缶を投げつけられた際に、家の壁をぶち破り吹っ飛んでいたら、本作は現実感のないコメディ映画へと風変わりし、名作ではなくなっていたことだろう。