アメリカで意外な大ヒット。批評家からは辛辣な意見も…。
『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』(2018)
上映時間:92分
原作:『タイヨウのうた』(2006)
製作国:アメリカ
監督:スコット・スピアー
脚本:エリック・カーステン
キャスト:ベラ・ソーン、パトリック・シュワルツェネッガー、ロブ・リグル、クイン・シェパード、ケン・トレンブレット、スレイカ・マシュー、ロブ・リグル
【作品内容】
本作は、「色素性乾皮症」という、太陽光を浴びることによって遺伝子に損傷を受け、皮膚がんを患う可能性のある病気によって、昼夜逆転の生活を送りながらも、夜中、ストリートミュージシャンとしている中で、1人の少年との出会いによって、人生が大きく変わっていく姿を描くヒューマンラブストーリーだ。
日本版である『タイヨウのうた』は、天川彩の原作を基に、坂東賢治の脚本、監督は小泉徳宏が務め、ヒロインの雨音薫役に「FLOWER FLOWER」のYUI、少年の藤代孝治役に塚本高史がキャスティングされた。
【注目ポイント】
当時、人気絶頂を誇っていた歌手のYUIを主役に据えたこの作品、実は1993年の香港映画『つきせぬ想い』のリメイクであり、その『つきせぬ想い』も、1961年の香港映画『不了情』から着想を得たものだ。つまり、『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』は、再々々リメイク版ともいえる作品なのだ。
『タイヨウのうた』については、『つきせぬ想い』のリメイクと感じさせないほど、ストーリーの大幅な改変や、キャラクター設定の変更などがなされており、ほぼオリジナル作品といっていい作りとなっている。さらに、沢尻エリカと山田孝之の主演によるテレビドラマ版や、舞台版、ミュージカル版も製作され、米国でのリメイク版製作前には、ベトナムでテレビドラマ版が放送されている。
ハリウッドで製作された米国リメイク版は、俳優のほかでも、歌手としてビルボードチャートに入るなど、多才なベラ・ソーンを主人公に据え、相手役には、あのアーノルド・シュワルツェネッガーの長男であるパトリック・シュワルツェネッガーを抜擢。
比較的地味な日本映画のリメイクとあって、興行的な期待値は決して高くなかったにもかかわらず、興行収入は約2700万米ドル(約40億円)と低予算映画としては上々の成績。
一方、批評家の評価はやや厳しく、「単なる凡庸なラブストーリーに終始し、肝心の色素性乾皮症の描写が曖昧で、さらに正確ではない」といった辛辣なレビューも目立った。
脚本も坂東賢治の書いたものから、大幅な改変がなされたわけではなかったものの、主人公の2人の描写を前面に押し出したことが裏目に出て、肝心のテーマが薄くなってしまったことが、批評家からの低評価に繋がってしまったようだ。
しかしながら、興行成績だけみると大健闘と言っていいだろう。何より、日本国内で必ずしも大ヒットしたわけではない中規模映画が、海外のプロデューサーの目に留まり、しかるべきアレンジが加えられて、商品として成功を収めたのが素晴らしい。巨視的にみて、日本映画の発展に寄与するリメイクと、言い切ってしまって差し支えないだろう。
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