繊細な少年エリオと挑発的なオリヴァー
エリオ&オリヴァー『君の名前で僕を呼んで』(2017)
上映時間:132分
原題:Call Me by Your Name
製作国:イタリア、フランス
監督:ルカ・グァダニーノ
脚本:ジェームズ・アイヴォリー
キャスト:ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール、エステール・ガレル、ヴィクトワール・デュボワ
【作品内容】
舞台は1983年夏、北イタリアの美しい避暑地。両親と共に夏休みをイタリアの別荘で過ごしていた17歳の少年エリオ(ティモシー・シャラメ)。そこへ大学教授である父の助手として、アメリカから訪れたオリヴァー(アーミー・ハマー)がやってくる。
エリオは、自信と知性に溢れるオリヴァーに興味を抱き、次第に2人は激しい恋に落ちていく。そんな中徐々にオリヴァーの帰国が近づいていく…。
【注目ポイント】
アメリカ人作家、アンドレ・アシマンの小説『Call Me by Your Name(原題)』に基いた物語を、イタリアの映画作家、ルカ・グァダニーノ監督が映画化したのが本作『君の名前で僕を呼んで』である。
主人公である少年エリオを演じた俳優ティモシー・シャラメは、第90回アカデミー賞の最優秀男優賞にノミネート。当時22才という若さで自然な演技力を見せ、大きな注目を集める。
彼が演じたエリオは、イタリアの別荘で一夏の恋をする。その相手は、父の助手として訪れた自信家オリヴァー。
読書と読譜が趣味の内気で繊細なエリオは、当初、自信家で挑発的な性格が垣間見えるオリヴァーをよくは思ってはいなかったが、徐々にオリヴァーに強く惹かれていく。
ある日、2人が出かけた際に、エリオはオリヴァーに「誰よりも知識がある」と褒められる。しかしエリオは「大事なことは何も知らない」と答える。
オリヴァーが「大事なことって何」と聞くと、エリオは「わかるだろう?」と答え、「なぜ僕に言う?」とオリヴァーが聞くと「知ってほしいから。あなたにしか話せない」と自分を知ってもらおうとする。
しかしオリヴァーは「そういう話はすべきではない。わかったね」とエリオに答える。
終盤のシーンでは、オリヴァーは、お互いの関係について「うちの父親が知ったら僕は矯正施設行きだった」とエリオに話す。
ここからオリヴァーは、エリオと一線を越えすぎないことを意識していたことが伝わってくる。そんなオリヴァーとは対照的に、エリオは自由にオリヴァーを求める。
本作ではそんな2人が一定の距離を保ったままお互いを求める、じれったくも淡い姿が映し出される。
また、川で遊んだり、裸でゴロゴロしたり、街のカフェで読書をしたりと、一見すると普通の日常を切り取っているだけに見えるが、どのシーンを切り取っても北イタリアの美しい風景が映し出されている。
そんな本作は、自分の人生の中で何気なく出会う人達との関係も、本作に登場するエリオとオリヴァーのような淡く美しい出会いなのかもしれないと、目の前の出会いを大切にしたくなるような作品となっている。