やっと全米公開…ディズニーが公開を妨害? スタジオジブリ映画『千と千尋の神隠し』が今更公開になったその理由とは?
text by 編集部
スタジオジブリ作品『千と千尋の神隠し』。20年近くにわたり日本映画史上歴代最高の興行収入を守り続けた本作は、米国の映画批評家からも絶賛を受け、2003年に米国アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞。ところがディズニーは公開当時、本作の米国での公開を渋っていたという。今回は米Colliderから、両社の確執をご紹介する。
きっかけは『もののけ姫』?
ディズニーとジブリの間にある確執
映画『となりのトトロ』(1988)の美しさとシンプルさ、『風立ちぬ』(2013)の複雑さ、そして『もののけ姫』(1997)の壮大なスケール。宮崎駿は、そのキャリア全体が「傑作」と呼ぶにふさわしいほど、多くの映画作品を生み出した名監督だ。中でも『千と千尋の神隠し(2001)の人気は高く、欧米を中心に大ブレイクしたものの、米国での公開は容易ではなかったようだ。
なぜ『千と千尋の神隠し』は、米国での公開が容易でなかったのか。その鍵を握るのが、ウォルト・ディズニー・スタジオだ。
ディズニーは90年代半ば、スタジオジブリと国際契約を結び、日本のスタジオジブリの作品を世界中に配給し、ホームビデオ化することとなった。この構図は、一方が映画作品を提供し、もう一方が権力をで映画市場に普及させるというもので、その後のピクサー社との関係とも類似している。
なお、この契約には、ジブリ作品が英語圏の視聴者により親しみやすいものになるよう、英語吹き替え版の制作も含まれていた。中でも、『魔女の宅急便』(1989)と、『天空の城ラピュタ』(1986)は、ディズニーのファミリー向けブランドに見事に合致しており、成功は目に見えていた。
しかし、1997年から、スタジオジブリとディズニーの関係に暗雲が立ち込めはじめる。この年、宮崎は、呪われた王子の視点から自然を描いた『もののけ姫』を発表。本作は、世界的に大きな興行的成功を収めたものの、従来作と比べて観客の年齢層が高い上に生々しい暴力描写が散りばめられており、ディズニーが期待していた映画作品とは異なっていた。