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ゴジラに飛行シーンはアメリカでは大絶賛。再評価著しい一作

『ゴジラ対ヘドラ』(1971)


出典:Amazon

上映時間:85分
監督:坂野義光
脚本:馬淵薫、坂野義光
キャスト:山内明、木村俊恵、川瀬裕之、柴俊夫、麻理圭子、吉田義夫、大前亘、岡部正、由起卓也、小松英三郎、権藤幸彦、加藤茂雄

【作品内容】

「ゴジラ」シリーズ第11作目にして、当時、日本各地で蔓延していた公害問題を取り上げ、さらに若者の間で流行していたサイケデリック文化などを織り交ぜた異色作。ヘドロで汚染された海から誕生した怪獣「ヘドラ」がゴジラと激突する。

【注目ポイント】

『ゴジラVSヘドラ』の全米公開時のポスター
ゴジラVSヘドラの全米公開時のポスターGetty Images

公開の前年、一貫してゴジラシリーズに関わってきた“日本の特撮の父”円谷英二が逝去し、新たなゴジラ像を表現したリスタートの作品でもある。それを見える形で示したかったのか、本作に登場するゴジラは、空を飛ぶのだ。

正確に言えば、自らの放射能噴射の勢いを利用し、“宙に浮く”ような飛行によって、ヘドラに体当たりするのだが、このシーンはゴジラシリーズ史上最もインパクトが強い、異彩を放つ演出であり、ファンを二分するように賛否両論が飛び交った。

同作プロデューサーを務めた田中友幸は、この演出に大反対したそうだが、撮影途中、田中が体調不良により一時降板したことで、撮影に至ったという逸話がある。公開後、田中は激怒したそうだが、公開されたアメリカでは“空飛ぶゴジラ”は意外と好評だったという。

放射能から生まれたゴジラと、工業廃水などの下水から生まれたヘドラ。いずれも人間の業によって誕生した怪獣だ。しかもヘドラは飛びながら猛毒の硫酸ミストをまき散らし、それを浴びた人の体は溶けて白骨化する。金属は錆びて腐食し、植物は枯れ果て、生き残った人も目に痛みを訴える。それは、人間が自然にしてきたことへの、大きなしっぺ返しにも思える。

幾度にもわたる死闘の末、ゴジラは片目を潰され、片腕を溶かされながらも、なんとかヘドラを倒す。

そして見せ場は最後にやってくる。去り際、ゴジラはともに戦った自衛隊員らを睨みつけながら海に帰っていったのだ。それはまるで「お前たち人間のせいでこうなったんだぞ!」とでも言わんが如くの行動だった。

しかし、全世界の海のヘドロが消えたわけではなく、どこかの海で、新たなヘドラが誕生しようとするシーンで物語が終わる。

怪獣映画でありながら、社会風刺的なストーリーに、拒否反応を起こすファンも多かったが、公開された時期と前後して、世界、特に先進工業国では公害による人的被害が表面化していく。ストーリーに現実が追いついていくような画期的な作品として、時代の経過とともに再評価された一作だ。

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