“荒ぶる神”ゴジラの誕生とヒットの裏側
とはいえ、ゴジラは、決して日本の中だけで誕生したモンスターではない。
『ゴジラ』公開の前年。1953年に、アメリカでとある映画が上映される。ユージン・ルーリー監督による特撮映画『原子怪獣現わる(The Beast from 20,000 Fathoms)』だ。
世界的ヒットを記録した『キング・コング』(1933年)の特撮を担当したウィリス・オブライエンの弟子レイ・ハリーハウゼンが参加した本作は、映画史上初めて核実験を扱った作品としても知られており、「核実験で蘇った巨大な怪獣リドザウルスが都市を襲撃する」という物語は『放射能X』(1954年)や、『戦慄!プルトニウム人間』(1957年)、『巨人獣』(1958年)など、多くの派生作品を生み出した。他ならぬ『ゴジラ』も、こういった作品の一つなのだ。
では、このうち、なぜ『ゴジラ』だけが息の長い人気キャラクターとなったのか。理由の一つとしては、ゴジラの「デカさ」が挙げられるだろう。リドサウルスの場合、身長は20mほどだが、初代ゴジラは50mとけた違いの身長を誇っている。ビジュアル面でも、リドザウルスがあくまで恐竜然としているのに対し、渡辺明が手がけたゴジラの造形は、恐竜とも大きくかけ離れている。これで口から10万度の白熱光を吐くわけだから、恐怖以外の何物でもない。
また、ゴジラは、撮影技法にも違いがある。『原子怪獣現わる』の場合は、基本的に全編がコマ撮りのストップモーションで撮影されているが、『ゴジラ』の場合は、予算の都合から着ぐるみで撮影されている。ストップモーションの場合、繊細で丁寧な表現が可能なものの、躍動感はあまり生まれない。一方、ゴジラの場合は、中に人が入っており、ゴジラの力をアクションとして表現できるわけだ。
そして、初代『ゴジラ』の公開から2年後、本作はアメリカで『怪獣王ゴジラ(Godzilla, King of the Monsters!)』として再編集されて公開。名前に「God(神)」が冠されて全世界に輸出され、世界中のクリエイターたちに多大な影響を与えることになる。
『原子怪獣現わる』を制作したルーリーもその一人。1961年に彼が制作した特撮映画『怪獣ゴルゴ』には、ゴジラさながらに着ぐるみ怪獣が登場するほか、当初日英合作になる予定だったといわれている。