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狂気じみた芝居に一見の価値あり

渡辺直美『約束のネバーランド』クローネ

渡辺直美
渡辺直美Getty Images

監督:平川雄一朗
原作:白井カイウ 出水ぽすか
脚本:後藤法子
キャスト
エマ:浜辺美波
レイ:城桧吏
クローネ:渡辺直美
イザベラ:北川景子

【作品内容】

原作は2016年からおよそ5年間に渡って連載された、白井カイウ原作のダーク・ファンタジー。2020年に公開された実写映画は、浜辺美波、北川景子といった豪華キャストが揃ったにもかかわらず、興行収入はおよそ2・5億円と振るわず。コロナ禍という逆境に見舞われたとはいえ、やや物足りない結果に終わった。

【注目ポイント】

『週刊少年ジャンプ』にて2016年号から2020年まで連載された『約束のネバーランド』。舞台となるのは、豊かな自然に囲まれた孤児院「グレイス=フィールドハウス」。里親を待つ子供達が、“ママ”と呼ばれる優しい女性・イザベラと共に暮らしていた。

しかし子供達の楽園かと思われていた「グレイス=フィールドハウス」は、鬼に献上する食用の子どもを育てる場所であり、それに気づいた主人公のエマが、仲間を連れて脱出するという物語だ。

原作で描かれるのは、西暦2045年のヨーロッパをモチーフとして描かれた架空の世界。登場人物もエマ、レイ、ノーマン、イザベラといった外国人風のキャラクターが多くを占めている。

今回、渡辺直美が演じるのは、イザベラと共に子供達を管理するクローネという女性。漫画で描かれるクローネは黒人女性で、身長は175cm。大きな体に似つかわしくない俊敏な動きが特徴。彼女は北川景子演じるイザベラが君臨する“ママ”の座を奪おうと目論む。

お笑い芸人の枠に収まらない、グローバルな活躍をみせる渡辺は、本作で腹黒い一面を持ち、重要な局面で物語に絡むキーキャラクターを堂々とした芝居で見事に体現。

上記の通り、見た目という面では体型や肌の色など、共通点はない。日本で制作する以上、人種的なギャップの埋まらなさはどうしてもあるが、渡辺は一度観たら忘れられない、濃厚な芝居を披露。クローネというキャラクターのエッセンスを見事に再現している。

狂気じみた芝居は真剣にやっているのか笑わせにきているのか、判断不能の境地に達している。憎まれ役ではあるが、振り切った演技はきわめて清々しい。また、北川景子演じるイザベラとの対比が鮮烈であり、展開にメリハリをつける役割を担っているという点でも、渡辺直美以上に適役はいないと思わせられる。

残念ながら作品自体の評価は高いとは言えないが、その中でも一人気を吐いた渡辺直美の女優としての次回作が観たいと思うのは筆者だけではないはずだ。

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