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A24が届ける真昼のホラー。”9”という数字の意味とは

『ミッドサマー』 (2019)

映画『ミッドサマー』イラスト:naomi.k
映画ミッドサマーイラストnaomik

上映時間:147分
監督:アリ・アスター
脚本:アリ・アスター
キャスト:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ウィル・ポールター、ウィルヘルム・ブロングレン、アーチー・マデクウィ、エローラ・トルキア、ビョルン・アンドレセン

【作品内容】

アメリカの大学で心理学を専攻しているダニー(フローレンス・ピュー)には辛い過去がある。精神障害を患っていた妹が両親を道連れに自殺したのだ。ダニーの彼氏・クリスチャン(ジャック・レイナー)は、ダニーの心の支えとなっていたが、近ごろは彼女の存在を重荷に感じている。

翌年の夏。ダニーはクリスチャンと共に参加したパーティーで、スウェーデン人留学生・ペレから興味深い話を聞く。ペレの故郷である「ボルガ村」では、90年ぶりに夏至祭りが行われるというのだ。ダニーとクリスチャンは、ペレと共にスウェーデンに渡り、お祭りへの参加を決めた。

【注目ポイント】

本作は、都会に住む若者が異文化の儀式に巻き込まれ、悲惨な結末を迎えるストーリーだ。本作は考察要素が豊富にあり、多くの映画ファンを魅了してきた。

その理由の一つに、文化の衝突が挙げられる。というのも、本作をみると”私たちの常識が世界の常識とは限らない”という真理を痛感させられる。

その最たるシーンが生贄の儀式「アッテストゥパン」による飛び降り自殺であろう。舞台となるボルガ村では、72歳になると自ら死を選ばなくてはならないという決まりがあるのだ。

老人2人が崖から飛び降りているにもかかわらず、平然としている村人たち。一方、都会の若者たちは慌てふためく。対比的に描かれた2つの反応は、文化の差異を強く印象づけ、観る者の考察意欲を刺激する。

本作の主な考察ポイントは、「儀式の目的」である。本作では様々な残酷な儀式が繰り広げられているが、真っ先に思い浮かぶのは、「なぜこのような儀式をしているのか? その目的は?」といったことであろう。

人は理解出来ない事象に対し、目的や理由を求めるものであり、だからこそ考察を重ね、真実に近づきたいと思うのだろう。

ちなみに「儀式の目的」は、9人の生贄を神に捧げることである。しかし「なぜ9人の生贄が必要なのか?」といった解釈は、観客に委ねられている。

90年ごとに行われる祝祭。祝祭の期間は9日間。9人の生贄。そして先述した老人の年齢は72歳。これは9の倍数なのだ。そして計算されたように、映画のタイトル『Midsommar』も9文字のアルファベットから構成されている単語である。

この”9”が意味するものはなんなのかは、本作の中で最も意見がわかれるポイントだろう。

また、村人たちが信仰する「太陽・水・大地」の神々への生贄であることは理解出来るが、生贄を捧げることによって何を得ようとしているのかは、はっきりと描かれない。このように敢えて真相をはっきりと描かないことにより、観客に考察する余地を残しているのである。

本作のラストシーンは、主人公ダニーの不穏な笑顔で幕を閉じている。そのため、ダニーがその後どうなったのか? 儀式はまだ続くのか? など様々な考察がされている。

その中でもとくに考察が繰り広げられているのは、ダニーの生死である。というのも、ホルガ村の祭典はまだ半分ほどしか終了しておらず、これからも更なる悲惨な儀式が繰り広げられていくことが容易に想像出来るからだ。

そして新たなメイクイーンとなったダニーが、正気を取り戻した結果、次の儀式の犠牲になるのではないか? などといった考察が繰り広げられている。

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