視聴率は歴代最低…。
しかし大河ドラマの歴史を覆す意欲作
『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019)
主人公:金栗四三、田畑政治
放送期間:2019年1月6日~12月15日
脚本:宮藤官九郎
最高視聴率:15.5%
主演:六代目中村勘九郎、阿部サダヲ
【作品内容】
日本が初めて参加した1912年ストックホルムオリンピックから、1964年の東京オリンピックまでの半世紀を描いたドラマ作品。
日本人初のオリンピック選手・金栗四三(六代目中村勘九郎)と、日本でのオリンピック招致に尽力した朝日新聞の記者・田畑政治(阿部サダヲ)の2人の主人公によるリレー形式で展開された。
【注目ポイント】
長い大河ドラマの歴史の中で唯一、最終回の視聴率は歴代最低の8.3%を記録した“史上最低の大河ドラマ”と記憶される本作。翌年に迫った東京五輪を盛り上げようと企画された。
宮藤官九郎を脚本に迎え、テンポのいいストーリーだったが、敗因を挙げるとすると、主人公の2人があまりにも無名だったこと。また、ストーリーテラーとして登場する古今亭志ん生(ビートたけし)の落語によって物語が語られていくという設定も視聴者の混乱を招くことになった。
クドカンこと宮藤官九郎のファンには熱狂的に受け入れられたが、世界平和や人種差別、女子のスポーツ参加といった現代的なテーマに寄り過ぎており、朝ドラならともかく、少なくとも大河ドラマで描く題材ではないと、従来の大河ファンからソッポを向かれてしまった。
そもそもクドカンは、視聴率度外視で始まっても、いつしか視聴者を巻き込み、ブームを起こすことのできる脚本家である。その真骨頂が2013年の朝ドラ『あまちゃん』だ。
従来の朝ドラを見る層に新たな層を呼び込むことに成功した体験を根拠に「大河は高齢者だけのもの」という状況を打破するため、朝ドラでの改革を大河ドラマにも持ち込む狙いで『いだてん』が選ばれた経緯がある。
実際のところ、『いだてん』は『あまちゃん』ほどの爆発力は発揮できなかった。そもそも朝ドラと視聴率のベースが違うという事情もあるだろう。しかし、『いだてん』は盤石だった大河ドラマの視聴層に敢然と挑戦したのだ。
外部演出家を初めて大河に起用するなど、新たな試みもなされている。ここに新たな大河のスタイルを提示しようとするクドカンのプライドが見え隠れする。
視聴率的には大惨敗に終わった本作。しかしながら、大河ドラマで戦後日本を描くというチャレンジはいつか、再評価される日が来るのではないかとも感じる。同じように戦後や昭和中期・後期の物語を大河ドラマで描く際のモデルケースとなるからだ。そしてその時は、そう遠くないとも感じるのだ。
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