絶望に裏打ちされた壮絶な一言
「俺が仲間を殺せないと思ったのか? 俺たちがどれだけ仲間を殺してきたか、知らねえだろうに」
これは、リヴァイの目の前で、部下を巨人化したジークに対し、リヴァイが言ったセリフだ。
ジークは、「ウォール・マリア奪還最終作戦」の際に、「獣の巨人」としえ登場し、調査兵団を絶望の淵に陥れた敵国マーレの戦士長だったが、実はマーレに対し叛意を持っており、調査兵団に対して協力を申し出る。
しかしその信頼関係は長く続かず、ジークの勢力と調査兵団は最終的に決別する事となる。
ジークはリヴァイとその部下によって監視されていたが、ワインに巨人化の薬を混ぜることでリヴァイの部下を巨人化させ、彼らをリヴァイにけしかけた隙に逃走を図る。
「リヴァイは自分の部下を殺す事ができない」そう考えての作戦だったが、そんなジークの読みに反して、リヴァイは部下を瞬殺。あっという間にジークに追いつき、再び捕らえてしまう。
結果として部下を殺害したリヴァイだが、決して部下に対する情が無かったわけではない。
むしろ、作中ではこれまでに何度もリヴァイの部下想いの一面が描かれてきた。仲間に対する情は人一倍強いと言って良いだろう。
そもそも調査兵団の戦いは、これまで常に大量の犠牲を伴うものだ。最も信頼していた上司も、共に戦ってきた戦友も、初めての戦いだった新兵も、人類の勝利のためだと信じて命を捨て戦ってきた。
先述した、特攻作戦で調査兵団の団長エルヴィンも「死んでいった仲間の命に意味を与えられるのは、生者である我々だけだ」と語っていた。
自らの心臓を捧げ、生き残った仲間に遺志を託す。そして生き残った仲間は次の戦いに赴き、そこでまた次の仲間に託す。それこそが調査兵団の在り様なのだ。
そして、リヴァイが壁中人類を守れずに敗北することは、今までの犠牲を無駄にする事を意味する。リヴァイにとっては、それこそ許せないことだっただろう。
仲間を犠牲にする行為は、確かに一見非情に見える。しかしリヴァイは、仲間から心臓を託されたという自覚があるからこそ、新たな犠牲を割り切り、戦い続けることが出来るだ。
調査兵団の歴史と、リヴァイの悲壮なまでの覚悟が伝わる名言といえるだろう。
本作は、もちろんアクションや緻密に練られた伏線などが秀逸な作品であるが、キャラクター一人一人のセリフにフォーカスすると、人生に悩む現代人にとって心に刺さる言葉が多くあることが分かる。
それは決して「頑張ろう!」と、ポジティブな感情にするものではないが、どんな恐怖や絶望も目を逸らさずに受け入れ、壁を越えなければならないということを私たちに教えてくれているのだ。
(文・ヘーボン)
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