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鬼太郎が無力?
欲深い人間の業が生み出した悲惨な結末

「地相眼」(第2期)

演出:笠井由勝
脚本:柴田夏余
作画監督:生頼明憲

鳥取県境港市の水木しげるロードに並ぶ銅像【Getty Images】
鳥取県境港市の水木しげるロードに並ぶ銅像Getty Images

第2期『ゲゲゲの鬼太郎』の怖さは、なにも妖怪やお化けの怖さに留まらない。未だにトラウマ回としてささやかれる「地相眼」は、人間の恐ろしさを描いた作品になっている。

原作は、水木しげるの同名短編漫画で、エピソードの中心人物は安井という実業家だ。安井は戦時中、とある洞窟に迷い込み、「地相眼」という玉を手に入れる。安井は、地球上の地相を見ることができるというこの玉を通じて、石油や天然ガスといった天然資源の採掘で大成功し、一代で大金持ちになる。

そんな折、安井のもとに巨大なミミズの妖怪が訪れる。妖怪によると、盗まれた地相眼を新たに作る必要があるため、自身の命と財産を犠牲にするか、息子の安男の命を犠牲にするかどちらかを選ぶ必要があるという。そして、10年後に再度やって来るまで、どちらかの選択肢を選ぶよう伝え、ミミズは去っていく。

安井は鬼太郎に助けを乞うが、鬼太郎は乗り気ではない。また、息子の安男は、薄々事情を感づいており、なんとなく無気力のまま日々を送っている。安井は、ケガをした安男を手厚く介抱したり、鬼太郎のもとで暮らすことを認めるなど、安男に束の間の愛情を見せるが、自身の財産がなくなると多くの社員が路頭に迷う可能性があるため、結局安男を生け贄に捧げる道を選ぶ。

そして10年後。鬼太郎たちの説得もむなしく、巨大ミミズがやって来る。そして、安男は巨大ミミズに身体ごと巻かれ、妖怪たちに囲まれながら、地相眼へと姿を変えていく。

本作のラストでは、安男が、意識が薄れゆく中で自身の父親が特別エゴイストではなかったと認めながら、日本人がいつから集団発狂してしまったのか、なぜ人間はみんなで幸せに暮らす方法を探らないのかと思いを巡らせる。

なお、この「地相眼」は、第2期を最後にアニメ化されていない。その理由には、経済競争が当たり前のものとなり、「個人の命を取るか、経済を取るか」という二者択一に対する答えが、あまりにも自明なものとなってしまったという悲しい背景があるのかもしれない。

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