飛行と豚ー
宮崎駿作品のエッセンス
めくるめく映像と痛切なメッセージが印象的な『紅の豚』は、宮崎駿の作家性が凝縮された作品でもある。
例えば、本作のテーマとなる「飛行」は、ほぼ全ての宮崎作品の物語の推進力となってきた重要なテーマだ。特に本作の場合は航空機の素晴らしさや航空技師たちのルーティーン、そして戦闘機同士の空中戦が他の作品にも増して鮮やかかつ美しく描かれている。
「豚」も宮崎作品に頻出するモチーフだ。『千と千尋の神隠し』(2001)では、不思議の町に迷い込んだ千尋の両親が店先の料理を勝手に食べて豚に変身する。これは人間の貪欲さを象徴している。
『紅の豚』では、「豚」がポルコの罪悪感と自己嫌悪を象徴するモチーフとして登場する。ポルコは、自分自身を臆病な豚だと考えているのだ。