反戦映画としての『紅の豚』
また本作は反戦映画でもある。平和主義者である宮崎は、『千と千尋の神隠し』がアカデミー賞外国語映画賞を受賞した際、アメリカのイラク侵略に抗議して授賞式への出席を拒否したように、一貫して戦争やファシズムを批判し続けてきた。
こういった宮崎の思想は本作でも受け継がれており、作中では、軍の指導者たちがポルコの軍への復帰を条件に恩赦を与えることを約束した際、彼は「ファシストになるよりは豚の方がマシさ」という名台詞を口にする。
そして本作は「贖罪」をめぐる映画でもある。
『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』(1997)で、白黒はっきりつけられないグレーなヒーローや悪人を描いてきた宮崎。本作では決闘の最中に、悪役であるはずのカーチスが、ポルコにジーナが彼を愛していることをそれとなく伝える。そして、この言葉をきっかけにポルコは自分自身を許し、自分が幸せになる選択を下すのだ。
これまで数々の名作を送り出してきた宮崎駿だが、本作が顧みられないのは実に残念だ。軍人のサバイバーズギルドと贖罪を探求した本作は、『千と千尋の神隠し』や『魔女の宅急便』同様に名作と呼ばれるにふさわしい作品なのだ。
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