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史実に肉付けされた『大奥』のリアリティ

『大奥』平賀源内役:鈴木杏 【本人のインスタグラムより】
大奥平賀源内役鈴木杏 本人のインスタグラムより

 

『大奥』には歴史上の人物が多数登場するが、そのほとんどが実際の性別とは逆。しかし、基本的な話の流れは史実に基づいており、教科書に出てくる内容から噂レベルのエピソードまでが幅広く物語に織り交ぜられている。

特に秀逸なのは、14代将軍・徳川家茂の正室である和宮のキャラ設定だ。作中では、公武合体のために孝明天皇の“弟”である和宮が朝廷から降嫁してくるはずが、本人がそれを拒否。代わりに帝の妹宮・親(ちかこ)が和宮になりすまし、母親の観行院と共にやってくるという設定になっている。

これは、一部で囁かれている和宮の替え玉説を応用したものだ。さらに、和宮は現存する肖像画に左手が描かれていないことから、先天的あるいは後天的な理由で左手がなかったのでは? という噂もある。よしながはそれすらも取り入れた上で、生まれつき左手がないという親子(ちかこ)の設定を、本作の核となる“血縁の業”に繋げている。

江戸城に設けられた“大奥”は、徳川家の血を絶やさず繋いでいくために存在した場所だ。それは、漫画でも史実でも同じ。あけすけに言えば、そこにいる人間は将軍の子を増やし、育てるためだけに集められている。代々の将軍たちにも自分の子を作らないという選択肢などなかった。それは男でも女でも、徳川家が世襲制を敷いている以上は変わらない。

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