『きのう何食べた?』でも描かれた“血縁の業”
よしながのもう一つの代表作『きのう何食べた?』でも、“血縁の業”は描かれている。「モーニング」(講談社)にて連載中の本作は、ゲイカップルの弁護士・筧史朗(通称“シロさん”)と、美容師・矢吹賢二(通称“ケンジ”)の日常を切り取った漫画だ。西島秀俊と内野聖陽で実写化され、Season1が2019年4月、Season2が2023年10月期に放送された。さらには、2021年11月にSeason1の続編となる劇場版が公開されている。
2LDKのマンションで同居するシロさんとケンジ。料理上手で倹約家なシロさんが定時きっかりに帰宅し、夕食の支度をしてケンジの帰りを待っているのが2人の日常だ。シロさんが作るご飯は見た目も美味しそうで、栄養バランスもいい。どれも素朴で温かみのある料理で、漫画にレシピも記載されているため、実際に作ってみたという読者も多いだろう。
グルメ漫画としても優れた作品だが、見どころはそれだけじゃない。性格こそ正反対だが、基本的には仲が良い2人。しかし、元カノのパン屋に通うシロさんにケンジが嫉妬したり、ケンジが美容院の客に2人の関係をペラペラ話したことでシロさんが怒ったりと、険悪なムードになる時もある。
そこから浮かび上がってくるのは、同性同士のカップルだからこその苦悩だ。シロさんには、自分がゲイであることを知った母親が新興宗教に走ってしまった過去があり、学生時代に彼女を作ったことも。父親も十分に理解してくれているかといえばそうではなく、偏見の目に晒されてきたからこそ、シロさんはケンジと一緒にいる際に周りにどういう見られ方をしているかが気になってしまっていた。