多様化する社会だからこそ
改めて考えるべき問いにあふれている
そこで、ふと思う。なぜ深い愛情で結ばれた2人がなぜ周りの目を気にして生きていかなければならないのか、と。その違和感は、互いを思いやりながら共に年を重ねていくシロさんとケンジの姿を追っていけば追っていくほど深まっていく。誰が見ても理想の家族なのに、2人が戸籍上はそうなれない理由。それもきっと、まだこの国が”血縁の業”にがんじがらめにされているからだと思う。
親に孫の顔を見せることができないと罪悪感を感じていたシロさん。彼が家族ぐるみで仲良くしている渡辺家では、父親が一人娘のミチルに結婚と出産を急かしていたこともある。
その後、彼氏と授かり婚をしたミチルは息子を出産。シロさんの「史朗」という名前から「悟朗」と名付けた。そのことを喜んだシロさんが父親に語った、「お父さんの望んだ形の“次に伝わる”じゃないだろうけど。でも伝わってたよ」という台詞が忘れられない。
血の繋がりだけが家族であることを証明するのか。そうではないとするなら、人と人は何をもって家族となるのか。私たちは子孫を残すためだけに生きているのかーー。価値観が多様化している時代だからこそ、改めて考えたい問いがたくさん散りばめられているよしなが作品に、私たちは注目せざるを得ないのかもしれない。
(文・苫とり子)
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