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原作をリスペクトしたドラマ独自のシーンも魅力

映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』【公式インスタグラムより】
映画チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~公式インスタグラムより

ドラマの“第11話”と聞いただけで涙が溢れそうになるファンも少なくないだろう。安達の話を聞いた黒沢がとある提案を口にするシーンがあるのだ。これは原作にはない展開だが、自分の気持ちを抑え込んでしまうのは黒沢らしいとも言える。安達は涙を流し、黒沢は笑顔で泣いていた。

7年の一途な片想いの末にようやく実った関係なのに、ここでそれを選択して(させて)しまう黒沢に涙が止まらない。原作の黒沢はドラマの黒沢の選択を理解出来るかもしれないが、それでも違う道を選ぶと彼は言うかもしれない。

原作漫画を大いにリスペクトしつつも、生身の人間として映し出される安達と黒沢は、彼らならではの道を歩んで成長している。

ドラマ、映画を通して、直接的な性描写はほとんど見せずに、安達と黒沢の心情描写に重きを置いて二人の愛の深まりを会話、視線、表情などで表現している。安達と黒沢しか知らない余白部分も含めての作品であるのだと思う。そして、魔法使いを卒業してからも二人の物語は続いていくのだ。

相手を思いやるがゆえに自分の気持ちを我慢してしまう安達と黒沢だったが、二人がきちんと本音を言い合えるようになるその過程が丁寧に描かれている。お互いを改めて大切な存在として想い合う安達と黒沢、そしてそれぞれの家族の存在も心に沁みる。

安達と黒沢の物語はハッピーエンドでめでたしめでたし。という単純なものではないけれど、幸せのなかで時に困難もありながら手を取り合って一緒に前へと進んでいく──二人のそんな光ある未来を物語っているのではないだろうか。

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