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実はチャップリンやウディ・アレンに精通する芸能界屈指の映画好き

太田光『光へ、航る』(短編)(2018)

太田光
太田光Getty Images

監督:太田光
脚本:太田光
出演:草彅剛、尾野真千子、新井浩文、健太郎、山城智二、大西武志

【作品内容】

夫婦が日本中を旅しながら、野球が好きだった息子の失った“右腕”を探す…。

元SMAPの稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾が出演する4本の短編からなるオムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』の一編。

【注目ポイント】

チャールズ・チャップリンやウディ・アレンの映画への敬愛を公言する、1988年結成の漫才コンビ・爆笑問題の太田光。かねてより、ラジオやテレビを通じて映画監督業への意欲を語っている太田だが、長編映画の制作は未だ叶っていない。

親交の深い新しい地図のメンバー、中でもとりわけ演技派として定評のある草彅剛を主演に迎えた短編である本作は、1991年のオムニバス映画『バカヤロー!4 YOU!お前のことだよ』の第1話『泊まったら最後』以来、監督作としては2作目となる。

物語がフォーカスするのは、事故で脳死状態に陥った息子(航)を持つ草彅と尾野真知子の夫婦。野球少年だった航の右腕は、母親のたっての希望もあり、不慮の事故で腕を失った別の子供に移植されることとなった。しかし、夫婦には移植先の子供がどういう人物なのかわからない。

それまで家庭を顧みないでいた草彅(職業はヤクザだ)は、息子の右腕の提供先を知りたいと願う妻に寄り添って、全国を転々とすることになる。喪失感を抱えた夫婦の一風変わったロードムービーだ。

随所でクサいセリフもあるが、それがまったく嫌味にならない。全国を彷徨い歩いた夫婦が息子の右腕を譲り受けた他人の子供と相対するシーンは、涙無くしては見れない名場面となっている。

バラエティ番組で見せる破天荒な振る舞いとは裏腹に、ラジオでは古今東西の文学や映画に触れることで培った懐の深い人間観を披露する太田。来るべく長編映画では、そうした人間としてのアンビバレント(二律相反的)な魅力がこれでもかと詰まったものになるのではないか。心待ちにしたい。

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