ここから因縁が始まったー。純愛×バトルアニメ映画
『劇場版 呪術廻戦 0』(2021)
ーーーファンの間でも人気の高い本編の前日弾を、呪術師・乙骨憂太を主人公として描いたものですね。
「これも、子供の影響ですね。『連れてけ、連れてけ!』とせがまれて、本編をはっきりと鑑賞していない状態だったので 『大したもんでもねえだろ~』と、高を括って行ったら意外と面白かったんですよね(笑)」
ーーーいきなりスピンオフ作品を観て、ハードルが高くなかったですか?
「まず、僭越ながら言わせていただきますと、本編を熟知していなくても、セリフの力に惹かれました。作者の芥見下々さんの編み出すセリフは、1個1個立っていて、哲学的なことも含まれている。
ファンの方々からすればお馴染みかと思いますが、五条悟(日本に4人しかいない特級術師の一人で自他ともに認める現代最強の呪術師)が、元同級生で呪詛師に闇堕ちした夏油傑(一般人を大量に呪殺して術師が通う呪術高専を追放された)を殺す前に、「僕の親友だよ、たった一人のね」というセリフは、本当によかったっすね。うん。
なんか、『シン・ゴジラ』もそうなんですよ。ありもしない架空の話をリアリティを持たせて感動させるセリフや行動の描写って、すげえなって思うんですよね。
でも、そこに共感できるってことは、僕らが生活しているどこかの日常を切り取ってもいるということじゃないですか。そんな製作者側の考えを想像すると、グッとくるんですよね、本当に。キャラクターの愛おしさに対しても、全てに」
ーーー特に好きなキャラクターはいますか?
「夏油傑ですね。いや、ゴミ清掃員だからこじつけるわけではないですけど、人間からすれば、『悪=ゴミ=排除したい』みたいな存在であるキャラが、基本的に好きですね。
なんかね、「悪」側の気持ちも、この年になると段々と分かってくるんです。子供のころに読んでいたら、当たり前に正義側の主人公のマインドだったけど、どこかで間違えたら、自分も悪側の人間になっていたんじゃないかって思うところも、ちょっと考えるんですよ」
ーーー読む側の年齢によって、見方が変わってきますよねえ。
「ええ。だから、夏油傑は『独善的な悪』ではありますが、なんか純粋な人間らしい悪役とでも言うかね。彼には彼なりの深層心理の理屈が、きっとあるんですよね。もちろん、それを肯定するわけではありませんが」
ーーー夏油傑を実写化するとすれば、どなたが合うと思いますか? 僕は滝沢さんもハマるかなと(笑)。
「いえいえ! 僕だと、恰幅の良さが足りませんね。シソンヌの長谷川忍くんなんて、いいんじゃないですか(笑)」
ーーー顔のイメージが全然違いますって(笑)。ご自身でも、ホラー小説『かごめかごめ』を書いておられますが、実写化されるとしたら、イメージするキャスティングは?
「ある女性のストーカーを始めた主人公の男性がいて、追う立場から追われる立場へ逆転していくというストーリーなのですが、女性は、もう書いている途中から完全に吉高由里子さんをイメージしていましたね。それまで特に意識していたわけではないのですが、書き終わっているころには大ファンになっていたという(笑)」
ーーークリエイターならではの興味深い感覚ですね。他に好きな漫画は?
「『自虐の詩』という4コマ漫画が、日本一泣ける作品だと思っています。大学生の時に、相棒の西堀に教えてもらったんですよ。上下巻あって、下巻の真ん中位まで全然面白くなかったんです。
でも、下巻の途中から最後にかけては、 もうね…。ページをめくる度に大号泣。最初、あんなにつまんなかったのに。人生観変わりましたね。
ちょっと話が反れますが、僕もこれまで何人か異性と付き合いましたけど、この漫画を読んでもらって、なんとも思わない人には恋心が冷めてしまうんです」
ーーーああ、同じ作品に共鳴できるってことは、自分と感性が似ているってことですもんね。
「そうなんです。恋愛において、結構重要なポイントですね」
ーーー『劇場版 呪術廻戦 0』の話に戻りますが、ちょっとバトル描写がわかりにくくないですか?
「そう、わかりにくいんです! 僕の子供は抵抗なく観ているんですが、本当にわかんないとこありますよね。え!? 何をやってんだ? みたいな(笑)」
ーーー例えば、『ジョジョの奇妙な冒険』のように、バトルにおける能力が可視化されていないですからですかね。
「僕らが歳とったからだけかもしれません(笑)。きっと、今の子供たちには、見えているんですよ。呪術師たちの能力が」