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なぜ撮った…?
日本を代表する巨匠の”異色中の異色作”

是枝裕和『空気人形』(2009)

是枝裕和監督
是枝裕和監督Getty Images

監督:是枝裕和
原作:業田良家
脚本:是枝裕和
出演:ペ・ドゥナ、板尾創路、ARATA

【作品内容】

とある古びたアパート。住人の秀雄は、等身大の人形とともに暮らしている。空っぽな誰かの「代用品」だったはずの人形だったが、ある日持ってはいけないはずの「心」を持ってしまい、秀雄の暇を盗んで街へと繰り出す。

初めて見る外の世界で、さまざまな人とかりそめの出会いを繰り返していく空気人形だったが、ある日レンタルビデオ店で働く純一に一目惚れし、その店で働くことになる。

【注目ポイント】

『万引き家族』(2018)でカンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを受賞した巨匠、是枝裕和。『歩いても 歩いても』(2008)や『そして父になる』(2013)など、家族をテーマとした映画を得意とする印象のある是枝だが、中には思わず「なぜ撮った?」と言わざるを得ない映画もある。それがこの『空気人形』だ。

韓国屈指の人気女優ぺ・ドゥナが主演していることで話題を呼んだ本作。しかし、よくよく考えてみてほしい。彼女が演じているのは「ラブドール」であり、言ってしまえば「大人のおもちゃ」だ。ハートフルなストーリーを数多く手がけてきた印象のある是枝には似つかわしくないなんともハードなモチーフといえる。

また、作中に登場する「空虚な誰かの代用品」という設定も今のご時世であればコンプライアンス的にかなり問題がある。スクリーンで公開されれば、もっぱらSNS上で、さまざまな方面から叩かれることになったのではないか。

加えて、撮影監督も、『花様年華』(2000)や『珈琲時光』などのアジア映画で知られる撮影監督のリー・ピンピンが担当しており、他の是枝作品のトーンとは一線を画している。

とはいえ本作、作品としての評価は決して低いわけではない。黒歴史と言うよりは、あくまで一定の評価を得た巨匠の「意欲作」と受け止めたいところだ。

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