『ブラック・クランズマン』の方が相応しい?
使い古されたステレオタイプとの批判も
『グリーンブック』(2018)
上映時間:130分
原題:Green Book
製作国:アメリカ
監督:ピーター・ファレリー
脚本:ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・ヘインズ・カリー、ピーター・ファレリー
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ
【作品内容】
1960年代のアメリカが舞台のノンフィクション作品。人種差別に立ち向かう黒人ピアニストと、黒人にもともと嫌悪感を持っている白人運転手を描いた作品。2人は演奏ツアーを通して、徐々に互いを認め合い、友情を培っていく。
【注目ポイント】
『グリーンブック』のアカデミー賞受賞に批判が起こったのは記憶に新しい。この作品は黒人差別を描いているが、そのストーリーが「使い古されたパターンで面白みがない」と言われた。
「白人キャラクターが差別の救世主となる」というパターンのことで、これは確かにさまざまな作品で描かれてきた。また黒人ピアニストの扱いも、便利で深みがないという意見もあった。さらに、授賞式で製作チームが壇上に上がった際、そのほとんどが白人だったことも批判された。
人種を超えた友情という「希望」を描く本作だが、現実として人種問題が深刻化する中「こんなのんきな映画を撮ってる場合なのか」といった声まで上がった。
授賞式に出席した『ブラック・クランズマン』の監督スパイク・リーは受賞結果が受け入れられず、不満のあまり、会場から帰ろうとしたという話も。また黒人であり『ブラックパンサー』で主役を演じた故・チャドウィック・ボーズマンもこの結果を飲み込むのに難儀したというエピソードが残されている。
日本生まれの筆者的には『グリーン・ブック』を通して、当時の黒人差別の内容をリアルに理解できた気もしていたが、アメリカでは古いステレオタイプな価値観に根ざした作品であると見なす人々が意想外に多かったのであった。
人種差別を取り扱う作品はセンシティブであるがゆえ、賛否両論になりやすい。その点を踏まえると、あくまで想像ではあるが、仮に『ブラック・クランズマン』が作品賞を受賞したとしても、『グリーン・ブック』に向けられた批判とは別の観点から受賞妥当性を疑う声が上がるのは避けられなかったのかもしれない。