歴代アカデミー賞受賞作、最高傑作は? 作品賞を獲得した映画ベスト5選。オスカー主要部門を制覇した歴史的名作をセレクト
2024年1月23日に発表された第96回アカデミー賞ノミネート作品。中でも、最重要部門賞である作品賞には、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』やヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』など今年を代表する名作が揃っている。一体栄冠はどの作品に輝くのか。今回は、3月10日の授賞式の予習として、過去に作品賞を受賞した名作たちをおさらいしよう。
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アカデミー賞主要5部門独占
『羊たちの沈黙』(1991)
上映時間:118分
製作国:アメリカ合衆国
監督:ジョナサン・デミ
脚本:テッド・タリー
キャスト:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン、テッド・レヴィン、アンソニー・ヒールド
【作品内容】
若い女性を誘拐し、皮を剥いで殺害するという連続殺人事件が発生。捜査を任命されたFBI訓練生の女性クラリス(ジョディ・フォスター)は、複数の猟奇殺人事件の犯人として収監されている天才精神科医ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)から助言を得、心理面から犯人に迫るよう命じられる。しかし、レクターは、捜査への協力の条件として、彼女に自分の過去を明かすよう要求する。
【注目ポイント】
本作は、トマス・ハリスの同名小説を原作に、女性FBI訓練生と獄中の猟奇殺人犯との奇妙な交流を描いた作品。第64回アカデミー賞にて7部門にノミネートされ、『或る夜の出来事』『カッコーの巣の上で』に続き、作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞の主要5部門を独占した。
また、2011年には、アメリカ国立フィルム登録簿にも登録され「文化的・歴史的・芸術的にきわめて高い価値を持ち、後世に残すべき作品」であることが広く認められている。一般的に、サスペンス系の作品やホラー系の作品は賞レースで不利と言われており、本作に対する批評家筋の評価の高さがうかがえる。
本作の高評価のポイントは、なんといっても登場人物達の強烈なキャラクター設定にある。中でも取り上げるべき人物は、リトアニア貴族の血を引くハンニバル・レクター博士と、複雑な生い立ちを有するFBI女性訓練生クラリスの2人だろう。
また、「知性あふれる凶悪犯に捜査の協力を要請する」という斬新な設定も、評価のポイントだ。恋人でも友人でもないクラリスとレクターの不思議な関係性は、その後の映画やドラマにも多大な影響を及ぼしている。
そして、本作は、ドラマではお馴染みの「プロファイリングもの」(行動科学や犯罪心理学の知見をもとに犯人を推論する捜査法)の元祖でもある。そういった意味で、本作がもたらした影響は計り知れない。