『マトリックス』を凌ぐ5部門受賞
『アメリカン・ビューティー』(1999)
上映時間:122分
製作国:アメリカ合衆国
監督:サム・メンデス
脚本:アラン・ボール
キャスト:ケヴィン・スペイシー、アネット・ベニング、ソーラ・バーチ、ウェス・ベントリー、ミーナ・スヴァーリ
【作品内容】
中年男性のレスター(ケヴィン・スペイシー)は、アメリカ郊外の住宅地で不動産業を営む妻キャロライン(アネット・ベニング)や高校生の娘ジェーン(ソーラ・バーチ)と平凡に暮らしていた。しかし、夫婦仲は冷え切っており、年頃の娘との会話もない。そんなある日、レスターは突然広告代理店の仕事を解雇され、娘の同級生・アンジェラ(ミーナ・スヴァーリ)に一目惚れしてしまう。この出来事をきっかけに、隣人一家をも巻き込んだ家庭崩壊劇の幕が上がる。
【注目ポイント】
とある家族の崩壊から現代アメリカ社会の闇をシニカルに描いたブラック・コメディ映画。監督は『007』シリーズなども手掛けた英国演劇界出身のサム・メンデスで、2000年の第72回アカデミー賞では、あの『マトリックス』をおさえて作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞の5部門で受賞(『マトリックス』は4部門)。8部門にノミネートされている。
ストーリー展開や脚本に一切のムダがなく、未だに多くの批評家から高評価を受け続けている本作。その最大のポイントは、作中の人物がみな自分の幸せや美を追いかけている点だろう。
娘の友達に想いを寄せいかがわしい妄想をするレスターに、美しい物をビデオカメラで撮る癖を持つリッキー。そして、彼に思いを寄せ、変態趣味を分かち合うジェーンに、処女というコンプレックスを隠してモテ自慢を繰り返すアンジェラ。
それから、うだつの上がらないレスターに呆れ、金持ちと不倫するレスターの妻キャロラインも、自身がゲイであることを隠すために過度に規律を重んじるフィッツ大佐もー。監督のメンデスは、イギリス人らしい手つきで彼らの追い求める美の醜さを通して、アメリカ社会の闇を浮き彫りにしていく。
そんなクセのつよい人々の間に挟まれる主人公レスターは、実に悲しい顛末を迎えることになる。しかし、彼のラストの表情がどこか充足感に満ちているのは、極限まで自身の美を追い求めた結果だろう。