ヴェネツィア国際映画祭で最低ランク評価
原作者からも散々な酷評
『ゲド戦記』(2006)
上映時間:115分
監督:宮崎吾朗
脚本:宮崎吾朗、丹羽圭子
原作:アーシュラ・K・ル=グウィン
原案:宮崎駿
プロデューサー:鈴木敏夫
洋題:『Tales from Earthsea』
【作品内容】
世界を住み分けた魔法使いと竜。しかし魔法使いの世界に竜が現れたり、魔法使いは魔法の力を失ってしまうなど、世界の均衡が失われつつあった。
原因を探る旅に出かけたハイタカ(別名ゲド)は、精神を病み国王である父を刺して国から逃げ出したエンラッド王国の王子アレンと出会う…。
アーシュラ・K・ル=グウィンの「ゲド戦記」を原作とし、宮崎駿の「シュナの旅」を原案とした、宮崎吾朗の初監督作品。
【注目ポイント】
今さら触れるまでもないが、偉大過ぎる父の下で苦労し、父の反対を押し切った上で、長男の宮崎吾朗が監督・脚本を務めた初の長編作品。
作品の内容そのものよりも、製作中の父子の確執がクローズアップされ、父・駿が「吾郎を降板させて、今からでも俺に監督をさせろ」と言い出したエピソードや、不仲の父子の間でプロデューサー・鈴木敏夫の苦悩などが表沙汰となった曰くつきの作品だ。
宮崎駿は「試写会には行かない」と言っていたにも関わらず、当日になってフラリと現れ、「大人になってない」と、息子の作品に対し、厳しい感想を述べたが、後にスタッフには「素直に描けていて良かった」と評価していたことが分かる。
東宝は、興行収入100億円超えを目指したが、結果的には約77億円にとどまる。しかし、同年の邦画興行収入では1位となった。反面、国内外の多くの映画レビューでは酷評され、同年のワースト作品と評する者さえいた。
第63回ヴェネツィア国際映画祭で、特別招待作品として上映されたが、その評判は最低位ランクに終わる。原作者のアーシュラ・K・ル=グウィンでさえも「私の本ではない。原作の精神とはひどくかけ離れている」という明らかに不快と思われる声明を発表するなど、散々な評価を受けた。
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