原作改変によってファンからブーイングを浴びた
『聖闘士星矢 The Beginning』(2023)
上映時間:114分
原題:Knights of the Zodiac
製作国:日本
監督:トメック・バギンスキー
原作:車田正美
脚本:ジョシュ・キャンベル、マット・ストゥーケン、キール・マーレイ
キャスト:新田真剣佑、ファムケ・ヤンセン、マディソン・アイズマン、ディエゴ・ティノコ、マーク・ダカスコス、ニック・スタール、ショーン・ビーン
【作品内容】
幼少時に姉と生き別れになった星矢(新田真剣佑)は、スラム街の地下格闘場で戦う日々を過ごしている。ある日、戦闘の最中に突如未知のパワーを身につけた星矢は、それが原因で謎の組織から命を狙われるようになる…。
【注目ポイント】
車田正美による、世界累計5000万部を超える、日本を代表するマンガ作品『聖闘士星矢』。
その独特の世界観は、大人も子どもも夢中にさせ、マンガにとどまらず、アニメはもちろん、ゲーム化されたソフトやパチンコ・パチスロ台も大ヒット。小説やミュージカルの題材にもなった。
しかし、長らく実写映画化の噂は浮上しては消えていた。おそらくはこの世界観を実写で表現することは不可能であると、ファンも版権を持つ集英社も考えていたのだろう。
しかし、本作の実写化に果敢に挑戦する者が現れる。声を上げたのはハリウッドからだった。
CGアニメを数多く手掛けたトメック・バギンスキーがメガホンを握り、主演の星矢には新田真剣佑を抜擢。
東映アニメーションが出資し、ソニー・ピクチャーズのアメリカの映画製作レーベル「ステージ6フィルムズ」との共同製作なのだが、実質上、ハリウッド版アメリカ映画として製作されている。
新田が演じた星矢は、その内面を含めて描かれ、古くからの原作ファンからはおおむね好評だったものの、肝心のアクションシーンのCGは、他の作品と変わらないクオリティーで、差別化を図る試みは見られなかった。さらには原作からのシナリオの改変も、ファンからブーイングを浴びた一因となった。
興行収入も振るわず、日本国内で約1億2000万円、北米で110万ドル、中南米で436万ドル、ヨーロッパで114万ドルの“爆死”ぶり。本作の赤字は35億7600万円にも達し、東映アニメーションの同年の営業利益は49%減という、会社存続にも関わる数字を計上してしまう。
本作自体、ファンから見れば、マンガの『聖闘士星矢』の内容とはかけ離れているだけに、ハリウッド版は全くの別物として認識しているのだが、タイトルに「聖闘士星矢」の文言が入ったばかりにマイナスイメージが付いて回り、本作の“黒歴史”となってしまった作品だ。