“人生最高の瞬間はゴールではなくパスだ”
名言が詰まったヒューマンドラマ
『エリックを探して』(2009)
原題:Looking for Eric
製作国:イギリス・フランス・ベルギー・イタリア・スペイン
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
キャスト:スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ、ステファニー・ビショップ、ジェラルド・カーンズ
【作品内容】
同作には2人の「エリック」が登場する。
1人は、主人公であり、人生に疲れ果て、しかも2人の息子を男手ひとつで育てている、うだつの上がらない郵便配達員のエリック・ビショップ。そしてもう1人は、マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドであり、当時、世界最高のフットボーラーの1人であったエリック・カントナだ。
ビショップは、何をしてもうまくいかない現状を、カントナのポスターに愚痴ったその時、本人が目の前に現れる…。そんなファンタジー仕立てのストーリー展開。加えて、カントナが本人役で出演している。突然現れたカントナは、ビショップだけにしか見えない、いわば幻影だ。だが、エリックは恐れるどころか大興奮。カントナの華々しいプレイの数々が脳裏に鮮やかに蘇る。
別れた妻と再会する決心がつかず、悶々とするビショップに対し、カントナは「髭を剃れ」「勇気を出して会いに行け」「チャンスはどんな時にでもある」などと、極めてシンプルなアドバイスを与える。それぞれの言葉は、ビショップだけではなく、自分の人生に行き詰まりを感じ、自身に歯痒さを感じていると思われる多くの人の心にも、自然に受け入れられる言葉ばかりだ。
そんな中、息子2人が、安易な気持ちでギャングとつるみ、事件と関係のあった拳銃を預かる羽目になる。これを知ったビショップは毅然と息子と接し、自らが拳銃を返しにギャングのもとを訪れるものの、いたぶられて逃げ帰り、しかも不様な様子をユーチューブに流されてしまう。
ビショップはまたも惨めさに打ちのめされてしまうが、ここで再び、カントナが登場する。
カントナの名ゴールシーンが数多く浮かび、カントナの人生の最高の瞬間はゴールだと感じていたビショップは、カントナから“人生最高の瞬間はゴールではなくパスだ”と諭されることになる。
そして、仲間を信じてパスを出し、それが結果に繋がった時こそが、人生の最高の瞬間なのだと思い至ることになる。ここからストーリーは急ピッチで進み、仕事仲間に自分の窮状を一切合切さらけ出し、一致団結して再びギャングに戦いを挑む。
サッカーをテーマに据えつつも、主人公が勇気をもって人生に立ち向かう様を描いたコメディータッチのヒューマンドラマとなっている。