ドイツ人捕虜がゴールキーパーとして活躍する姿を描いた衝撃の実話
『キーパー ある兵士の奇跡』(2018)
原題:The Keeper
製作国:イギリス・ドイツ
監督:マルクス・H・ローゼンミュラー
脚本:マルクス・H・ローゼンミュラー、ニコラス・J・スコフィールド
キャスト:スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ、ステファニー・ビショップ、ジェラルド・カーンズ
【作品内容】
1945年、捕虜となったナチスドイツの兵士・トラウトマンがイギリスの収容所に送られ、サッカーをしていた際に地元チームからゴールキーパーとしてスカウトされ実績を積み、やがて名門「マンチェスター・シティ」に入団する。
元敵兵であるということもあり、客席から罵詈雑言を浴びながらもゴールを守り抜き、チームの優勝に貢献する…。実話に基づくヒューマンドラマ。逆境の中、サッカーを通じてイギリス人に受け入れられていく元ドイツ兵の波瀾万丈の人生を描いている。
敵国で自分の存在を認めてもらうにはサッカーしかないと決心し、プロフェッショナルとして前に進むトラウトマン。そこにはもちろん弊害もあるし、偏見や憎悪も覚悟している。そして、そのプレーぶりや実直な人柄によって周囲の人々の心を動かしていく。
そして、この作品に彩を加えているのが、地元クラブのオーナーの娘にして、やがて妻となるマーガレットの存在だ。当時、ドイツ人とイギリス人が結婚することに困難が伴ったことは想像に難くない。大きな壁を一つ乗り越えたと思われたトラウトマンだったが、戦時中のトラウマから抜け出せずにいた。
乗り越える手立てはなかなか見つからないまま、トラウトマンを不幸な出来事が遅い、本人は戦時中の行為の報いだと感じるようになる。その悲しみを妻とともに乗り越えていく様子が、同作のもう一つの見どころといえる。
戦争で愛する人を亡くした人は、敵国の人間を許せないのがごく当たり前の感情とも思えるが、それを受け入れ、賛辞を贈る人々も素晴らしい。
サッカー界には未だに偏見や人種差別などが色濃く残っている。その上、戦争により、サッカー界から追放された国もある。しかしながら、その国に住まう選手自身に罪はないはずだ。
こんな時代だからこそ、なお輝きを放ち続ける作品といえる。