クリストファー・ノーラン絶賛の異色の社会派ヒーロー映画
『ウォッチメン』(2009)
製作国:アメリカ
監督:ザック・スナイダー
脚本:デヴィッド・ヘイター、アレックス・ツェー
キャスト:マリン・アッカーマン、ビリー・クラダップ、マシュー・グッド、ジャッキー・アール・ヘイリー、ジェフリー・ディーン・モーガン
【作品内容】
1930年代、アメリカには犯罪と闘うマスクヒーロー「ミニッツメン」が現れた。彼らは様々な運命を辿り、多くが姿を消した。数十年後、超能力を持つ第二世代のヒーロー「ウォッチメン」が結成され、アメリカ政府に利用されて歴史的事件に関与する。しかし、政治的な動きにより、ウォッチメンは非合法化され、世界は核戦争の危機に瀕する。コメディアンの死をきっかけに、ウォッチメンは再集結する。
【注目ポイント】
『ウォッチメン』はDCコミックス発のスーパーヒーローものの映画作品だ。他のヒーローものと比べて、とてもシリアスで社会派な内容となっている。
単純な勧善懲悪ものの作品ではない。ヒーローで構成されるチームのなかでも汚職があり、それを誰が見張るのか……いったい誰が正しいのか……という深い意味での「正義とは」に言及した作品だ。
原作コミックは、1986年から1987年にかけて発表された。この評価がとても高い。同じくDCコミックスの『バットマン』とともに、それまでのきらびやかなヒーロー像を一変し、現実主義で暗い雰囲気のものに変化させた重要な作品だ。
当時のアメリカでは成人読者の「コミック離れ」が進んでいたが『ウォッチメン』によりコミックスに帰ってきた……とまで言われる名作である。
そんな『ウォッチメン』の実写映画は2009年に公開された。まず今作の映画化については、1980年代から2000年代に至るまで、議論が交わされてきた。しかし難易度が高く、なかなか実現しなかった。
そんな作品を実現したのが『300』(2006年)で有名なザック・スナイダー監督だ。まずはこの作品の実写化に成功しただけですごい。しかし当時、興行的には振るわない結果となった。
その背景としては先述したように「リアル過ぎた」という点がある。2000年代当時のスーパーヒーローものは、まだ「正義とは何か」というシリアスなテーマではなく「わかりやすい勧善懲悪もの」が求められていた。そんななかで『ウォッチメン』は少し現実主義過ぎたのだ。
しかしその後『アベンジャーズシリーズ』により、こういった深い意味での”正義”を問う作品は人気となった。
自身も『バットマン ビギンズ(2005年)』や『ダークナイト(2006年)』といったスーパーヒーローもの作品を撮ったクリストファー・ノーラン監督は、2023年に「『ウォッチメン』は時代を先取りし過ぎた。『アベンジャーズ』の後に公開されたら、もっと魅力的だったと思う」とこの作品を再評価している。
こうした状況も踏まえて『ウォッチメン』はアメリカのスーパーヒーローもの映画のなかでも、とても重要な作品として掲げたい。