ゲテモノ映画かと思いきや…。
原作のエッセンスを凝縮した見事な実写化
『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019)
監督:フィリップ・ラショー
脚本:フィリップ・ラショー、ピエール・ラショー、ジュリアン・アルッティ、ピエール・デュダン
キャスト
リョウ(ニッキー・ラーソン):フィリップ・ラショー
カオリ(ローラ・マルコーニ):エロディ・フォンタン
海坊主(ファルコン):カメル・ゴンフー
【作品内容】
大の『シティーハンター』ファンであるフランス人監督、フィリップ・ラショーがメガホンをとった、オール外国人キャストによる実写版。
フランスではジャパニーズアニメ・漫画の人気が高く、他のヨーロッパ諸国に比べて、日本の漫画文化に対する理解が深いことで知られている。監督のフィリップ・ラショーは、子供のころに『シティーハンター』のアニメを観て大ファンとなったという、筋金入りの原作ファン。
実写映画化への欲望に駆られ、オリジナル脚本を執筆。原作者・北条司氏はラショーから送られた脚本を気に入り、映画化へのゴーサインを出した。フランス人から見たら、ジャパニーズドリームが叶った夢の作品なのである。
そんな今作は、当然のごとく原作愛に溢れており、人種の壁もどこ吹く風。原作ファンからも、「これぞ、シティーハンター!」と、拍手喝采を浴びながら、日本でも高い評価を受けた。
主人公・冴羽獠(リョウ)を演じるのは、これまた、まさかの監督であるフィリップ・ラショー自身。「獠がフランス人だったら、こんな感じに違いない!」と思わせる、見事な名演を見せている。
ヒロイン・槇村香(カオリ)役のエロディ・フォンタンは、容姿こそ原作の香とはイメージが違うが、ヒステリックでありながらも可愛らしい人物像を完璧に憑依させており、見事。「100tハンマー」など、お馴染みの小道具もしっかりと再現されており、その立ち振る舞いは、香そのもの。
また、原作では「こんな日本人、いるか!」と思えるキャラクターである、元傭兵の海坊主も、むしろ、外国人俳優であるから、断然ハマって見えるのも、怪我の功名か。
そして、ラストシーンの獠と香のお約束である、しょーもないやりとりからの、イントロが流れ出し、アニメ同様の名曲『Get Wild』(TM NETWORK)を起用したエンディング映像への流れには、原作ファンであれば落涙すること必至だろう。
原作コミックの1コマに実写のラストシーンを落とし込む演出など、本当にフィリップ・ラショー監督は、『シティーハンター』が死ぬほど好きなのだという想いが、最後の最後まで感じられる。
原作漫画、アニメに触れてこなかった人でも、楽しめること請け合いの一作だ。