真の家族愛。社会の偏見に立ち向かう力を与えてくれる
『チョコレートドーナツ』(2012)
製作国:アメリカ
監督:トラヴィス・ファイン
脚本:トラヴィス・ファイン、ジョージ・アーサー・ブルーム
出演者:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ
【作品内容】
カリフォルニアで歌手になることを夢見ながら、ショーダンサーとして日銭を稼いでいるルディ(アラン・カミング)、正義を信じ世の中を変えようと弁護士になったポール(ギャレット・ディラハント)、そして母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年マルコ(アイザック・レイバ)は、家族のようにお互い助け合いながらも、寄り添って暮らしていた。
しかし、ルディとポールはゲイであるということで世間から好奇の目にさらされる。検察側は、薬物により刑務所にいたマルコの実母に対し、釈放する代わりにマルコの親権を請求するよう持ちかけ、結局、マルコを奪われてしまう。
【ラストシーンは…】
マルコを引き取り一緒に暮らしていた実母は、また薬物に手を出す。母親が目を離しているとき、マルコは一人で夜の街に出ていってしまう。
物語のラストでポールは、ある新聞の記事と手紙を添えて、判事や弁護士に送って物語は終わる。
そこには「知的障害のあるマルコという少年が、3日間家を探し歩いた末、橋の下で一人で亡くなったそうです。彼は心の優しい賢く楽しい子どもでした。チョコレートドーナツが大好きで…」という言葉が綴られていた。
【注目ポイント】
本作のラストシーンが感動的なのは、弁護士や判事の表情と、ルディがキャバレーで歌っている姿、夜の街を彷徨い歩くマルコの3つの描写が交互に写して終わるという、エモーショナルな演出による。このラストは、社会の常識や法律に縛られすぎていないか、本当に大切なものは何か、といった身近かつ本質的なテーマを観客に投げかける。
ルディとポールの2人がマルコと共に最後の時間を過ごすとき、彼らの顔に映る無言の愛と切なさは、家族の絆がどんなに素晴らしく強固なものであるかということを雄弁に表現する。そして彼らの抱擁、目に溢れる涙、そして最後の別れは、観客の心を深く打つ。
ルディとポールはマルコをただ単に面倒を見るだけでなく、マルコに愛と安心感を与え、マルコが求めている家族になったのである。そのため彼らの別れは、観客に家族の本当の意味を問い直させ、社会の偏見に立ち向かう愛の力を与えてくれるのだ。
【まとめ】
今回紹介した映画はいずれも、人生において大切なことを教えてくれる教科書であるといっても過言ではない。そのラストシーンは、涙なしでは見られず、深い感動と余韻を与えてくれることだろう。
(文・ニャンコ)
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