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今じゃ絶対に作れない…不謹慎にもほどがある日本映画は? 邦画史上に残る問題作5選。時代を超えて愛される昭和の名作たち

昨今の映像作品には様々な制約があり、なかなか自由に製作するのが難しい世の中となっている。しかし昭和時代に製作された作品は、突飛なものや、踏み込んだ作品が多く、かなり制限が緩かったように思える。今回は、今の時代には絶対創ることが出来ないようなコンプラアウトな日本映画を5本紹介する。(文:村松健太郎)

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【著者プロフィール:村松健太郎】

脳梗塞と付き合いも15年目を越えた映画文筆屋。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在各種WEB媒体を中心に記事を執筆。

不謹慎が度を超えると笑えてくる!?
今じゃ絶対に作れない昭和のアブナイ名作たち

“コンプライアンス”。今や多様性やジェンダー、ガバナンス、SDCsと並んでニュースで見ない日はない言葉ではないだろうか。

フィクションという創造物においても“コンプライアンス”は順守されるものとされていて銀行強盗が逃走中であってもシートベルトをしっかり装着して、法定速度をきっちり守っている。

ただ、どんな不謹慎な事柄でも行き過ぎると“可笑しみ”が出てくることもある。そこをうまく昇華させて、大ヒットしたのが2024年1月期のTBSドラマ『不適切にもほどがある!』(=通称・ふてほど)だろう。

しかしこれはあくまでも逆手に取った離れ業。宮藤官九郎ぐらいの腕があってのことで、誰でもできるわけでなく、下手を打つとただただ不謹慎なだけで終わるので要注意でもある。

そんな中で、2024年の令和の時代ではありえない“コンプラ無視の映画5選”をご紹介しよう。

原子爆弾製造に皇居前バスジャック…際どい内容のオンパレード

『太陽を盗んだ男』(1980)

沢田研二
沢田研二Getty Images

監督:長谷川和彦
脚本:長谷川和彦、レナード・シュレイダー
出演:沢田研二、菅原文太

【作品内容】

原発に忍び込みプルトニウムを強奪した現役の中学の理科教師が手製の原子爆弾を創り上げ、これを武器に政府を脅迫。交渉役に指名された刑事が犯人を追い続ける。

【注目ポイント】

原子爆弾を自作した中学の理科教師が政府を脅迫するというショッキングな内容の物語。

主人公の城戸誠を当時アイドル的な立ち位置にいた沢田研二、交渉役として誠を追う刑事の山下を菅原文太が演じた。公開当時高い評価を受けたもののソフト化に関しては難航した部分もあり、長らく名画座でしか見られないカルト映画でもあった。

原発に忍び込みプルトニウムを盗み出しての原子爆弾製造や大量の重火器を身に着けた老人によるバスジャックが皇居前広場にいたるなど、際どい内容のオンパレード。さらに中盤のデパートの屋上から札束をばらまくシーンは完全なゲリラ撮影だった。

内容に加えて制作手法も今の時代では“一発アウト”な映画である一方、長谷川監督は胎内被曝者であり、その出自が色濃く出た作品でもある。『オッペンハイマー』(2023)が無事公開された今だからこそ併せて見たい一本でもある。

ちなみに山下警部のテーマは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009)にも使われている。

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