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日本映画史に残るラスト10分
名匠・諏訪敦彦とタッグを組んだロードムービー

『風の電話』(2020年)

監督:諏訪敦彦
脚本:狗飼恭子、諏訪敦彦
出演:モトーラ世理奈、渡辺真起子、三浦友和、山本未來、西島秀俊、西田敏行

【作品内容】

東日本大震災で家族を失った少女、ハル(モトーラ世理奈)は、広島に住む伯母(渡辺真起子)と暮らしている。そんなある日、伯母が倒れたことをきっかけに、広島から故郷の岩手にある「風の電話」を目指して旅をする。

【注目ポイント】

映画を見ていると、時にフィクションにも関わらず、そこに「ホンモノ」が映っていると錯覚してしまう時がある。『風の電話』はそんな映画だ。

本作の監督・諏訪敦彦は役者と一緒に脚本を練り上げていく独自の手法で知られ、本作でもこの手法が取り入れられている。そのせいか、役者たちの言葉がどこか生き生きとしていて、フィクションであるにも関わらずドキュメンタリーのような空気感を醸している。

本作で西島が演じるのは、東日本大震災で家族を失った元原発作業員・森尾。原発以降、車で寝泊まりをしている彼は、夜の街で不良少年に絡まれていたハルを見つけ、旅を共にする。

本作での西島は、例によって感情むき出しでセリフを吐くわけでもない。どこか不器用な優しさで、同じく津波で家族を失ったハルをただ見守っている。時にやり場のない怒りをぶつける春香にそっと寄り添っている。その内省的な演技は、彼女に対する祈りが込められているようにも思える。

また、ハルを演じるモトーラ世理奈の演技も必見だ。行く先々で人々の言葉に耳を傾けながらも、時に自らの感情を噴出させる。とりわけラスト10分は、日本映画史に残るシーンだ。ぜひその目で確認してほしい。

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