薬物売買摘発の裏に隠された衝撃の真実とは?
シーズン9「暴発」
放送日:2010年12月1日
脚本:櫻井武晴
犯人役:大柴隼人
本作は“杉下右京と神戸尊の対立”が見所である。
麻薬密売組織摘発の協力に赴いた特命係は抗争の最中、クーラーボックスから銃殺された死体を発見する。
組織内で銃の暴発事故が発生し後藤が鎌田を死なせてしまったと全員が証言。不審に感じた右京が調べると、死んだ鎌田は麻薬取締官で後藤はその協力者だと判明。
鎌田は組織でスパイだと疑われており、後藤は逃げるように促すも、鎌田は後藤に自身を強引に殺させて幕を引いたのだった。鎌田へ報いる為に麻薬取締官の早乙女は警察に便宜を図り後藤を救おうとする。また後藤も鎌田の想いを継ぎ今後も協力者になる事を約束する。
しかし杉下右京は止まらない。真実を明らかにしたら後藤が協力者であると組織に漏れて報復の恐れがある事も知りながら、最低でも鎌田への自殺幇助で立件しようと動く。
神戸は右京を裏切り、鎌田が麻薬取締官だった証拠を削除して警察へは辻褄のあうシナリオを提供する。
結局鎌田の死は暴発事故で処理され、神戸は右京へ謝罪するが、同時に後悔していない事も伝える。
杉下右京は絶対的正義を信条に持ち正しさの権化ではあるが、決してヒーローのような存在ではない事がこれでもかと詰め込まれている。
捜査員を死なせた事実を組織ぐるみで隠蔽する物語かと思いきや、捜査員は組織の為に覚悟を持って死んでいたというオチ。
早乙女や捜査一課や神戸が心情的にそれを理解して想いを汲もうとする中で杉下右京だけは止まらないのが恐ろしい。
先述した「特命」は個人に対して右京がどこまで残酷なまでの正義を振りかざせるのか提示したのに対して、今回は組織に対してどこまで正義を貫くのかを提示している。
特筆すべきは神戸の行動である。亀山なら行動を止めるか右京に付き従う形になっていただろう。しかし神戸は明確に右京の主張に否を唱え、対立する。
右京の“相棒”としてどう動けば彼を翻意させられるのか。また、何を話せば組織を動かせるのか。それらを熟知した神戸だからこそできる振る舞いである。
仲間ではあるが決して呉越同舟ではないという新たな”相棒”の構図をここで作り出せた功績は大きい。