クローン人間誕生の事態に右京と神戸が激しくぶつかる
シーズン10「罪と罰」
放送日:2012年3月21日
脚本:輿水泰弘
犯人役:浅見 れいな
本作は“神戸尊の集大成”であると言える。
夫と幼い息子を事故で失った須賀茜。茜は自身の母親でバイオテクノロジー学の博士である嘉神郁子へ依頼し、息子のクローンを妊娠する事に成功する。しかし聖職者で茜の兄である隼斗はクローンに猛反対。
茜は兄を煩わしく思い殺害。第一発見者の郁子は娘の為に自身が殺したと警察へ出頭する。
特命係は捜査に取りかかり、真犯人が茜である事を突き止める。だが、ここで全ての真実を公表すれば出産予定の子供がクローンであることが世間に知られ、差別や偏見に晒されるのは避けられない。
神戸は真実を公表しようとする右京から茜を誘拐し、お腹の子供を殺すと右京を脅迫。神戸の覚悟を感じた右京は“相棒”を殺人犯にさせない為、初めて折れる。この杉下右京を挫いた功績は高く評価され、神戸は警察庁長官官房付へ異動となる。
私は「特命」「暴発」「罪と罰」この三本が“相棒”神戸尊のテーマだと考えている。
杉下右京と神戸尊が3年の歳月を経て衝突したり笑い合ったり互いを理解できるようになったからこそ、この物語が成立し得た。
最初は互いの考えを理解できずギスギス、あるいはチクリと言い合うだけだった2人が、互いの信念を理解した上で譲れないものを争うような関係になり、最後は相手の想いと覚悟を知った上でぶつかり合う。
“相棒”なのに争い対立するのかという意見もあるが、信頼しあっていても譲れない部分があるのが人間であり、そこで積み重ねられたドラマがあるから面白いのである。
最後に、神戸尊時代に公開された劇場版Ⅱのキャッチコピーは「あなたの正義を問う」であった。このキャッチコピーにもあるように神戸尊の『相棒』では事あるごとに正義を問われ続けた。
また杉下右京の正義を正面切ってへし折るというのは先代の亀山薫や後任の甲斐享や冠城亘も成し得なかった。これを成し遂げた事はまさしく偉業と言っても差し支えない。神戸は現在も度々再登場をしているが、協力者としての立場が多い。
しかし個人的にはかつての小野田官房長のように右京とバチバチに互いの正義を巡り争ってほしいと思ってしまう。
(文・Naoki)
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