役を生きているかのような芝居
2021年に開設した中国最大のソーシャルメディア「微博(Weibo)」でのフォロワー数はいまや28万人超。X(旧Twitter)やInstagramでの投稿にも海外ユーザーから多数のコメントが寄せられるなど、赤楚はグローバルな人気を誇る。近年はタイをはじめ、アジア各国でBLドラマが大人気。
そんな中でYouTubeで公開され、注目を浴びた『チェリまほ』や、韓国の人気ドラマ『彼女はキレイだった』の日本リメイク版(2021、カンテレ・フジテレビ系)に出演した赤楚。単に目に触れる機会が多かったというだけではなく、国内外の女性を虜にしている最大の理由はその愛くるしさだ。
時代とともに理想の男性像は変化しており、現代ではワイルドでエネルギッシュな男性よりも、韓国ドラマに出てくるような、落ち着きがあって細やかな気遣いができる男性の方が好まれる傾向にある。
赤楚が演じてきた多くの男性も時代にフィットしており、その最たる例が連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022、NHK総合)で演じたヒロイン・舞(福原遥)の幼馴染・梅津貴司だ。
繊細な感性を武器に歌人として大成していく一方で、周りの“普通”に馴染めず、いくつものターニングポイントで立ち止まり悩む貴司。赤楚の憂いを帯びた瞳がそんな貴司の葛藤を色濃く映し出していた。
だが、葛藤だけではなく、赤楚はその瞳に様々な感情を乗せる。例えば、舞に向ける瞳は陽だまりのように優しく、「愛おしい」という貴司の心の声が言葉には出さずとも漏れ出てくるようだった。
『チェリまほ』でも魔法の力で社内随一のイケメンで仕事もデキる同期の黑沢優一(町田)から寄せられている恋心に気づいた安達の戸惑いが、少しずつ自信に変わり、最後には愛情となるまでの過程をグラデーションのある演技で見せた赤楚。
演技は嘘だけど、役を演じるのではなく生きているように見える赤楚の芝居には限りなく真実味がある。だからこそ、悩み、葛藤しながら生きているひとりの人間にみんな心を寄せてしまうし、その成長を見守りたくなるのだろう。
『こっち向いてよ向井くん』(2023、日本テレビ系)でも、男女の恋愛観のズレに頭を悩ませるリアルアラサー男性を体現し、同性・異性両方の視聴者から共感の声が上がった。