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最低の“悪役”で評価を上げた俳優は? 日本映画史に残るアンチヒーロー5選。トラウマ級の名演技をセレクト

映画には実に様々なキャラクターが登場する。その中にはいい人ばかりではなく、悪役も存在し、そして観客はいつの間にか悪役に感情移入していたりするものだ。今回は日本映画史で最も記憶に残る悪役5人をセレクト。作品の内容に加え、悪役を演じた5人の役者の魅力も解説。映画史上に残る「嫌な奴ら」を紹介していく。(文:村松健太郎)

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針を振り切った快楽殺人者を熱演

『ヒメアノ~ル』(2016)森田剛

森田剛
森田剛公式Xより

原作:古谷実
監督・脚本:吉田恵輔
キャスト:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、駒木根隆介

【作品内容】

清掃員の岡田(濱田岳)は高校時代に過酷ないじめを受けていた森田(森田剛)と再会するが、そこから想像もできない悪夢のような事件に巻き込まれる。

【注目ポイント】

「ヒミズ」「行け!稲中卓球部」で知られる漫画家・古谷実の同名コミックを名匠・吉田恵輔監督が映画化した本作。

主人公の岡田を濱田岳が演じ、同僚の安藤にムロツヨシ、両者から好意を寄せられるユカに佐津川愛美がキャスティングされた。さらに偶然にも同姓の森田役を元V6の森田剛が演じた。森田は高校時代に過酷ないじめを受けており、その反動ゆえか大人になって快楽殺人者に転じてしまった人物だ。

森田は暴力や他者を傷つけること躊躇のなく、さらには強烈な執着心の持ち主でもあるサイコパス。当時はまだアイドルグループの一員だった森田剛だったが、イメージ悪化のリスクも辞さず、本作では針がぶっ飛んだ、ブレーキの壊れた狂気の人物を力技で演じ切った。

殺人を犯す森田の瞳は常にどす黒く濁っており、その振る舞いからは良心の欠片も感じられない。名演出家・蜷川幸雄から「天才」と評された森田剛の表現力なくしては実現し得なかったキャラクターだろう。狂気的な芝居もさることながら、パチンコで隣に座ったおじさんと談笑するシーンなど、いわゆる普通の場面でもきわめて自然な演技を披露しており、作品世界にすっと溶け込む能力の高さには思わず舌を巻く。

今や主演級となったムロツヨシの怪演も見どころ。クライマックスの攻防はサスペンス映画の範疇を超えてスプラッターホラーに近い展開となっている。吉田恵輔監督の演出も振り切っていて堂々のR-15指定映画となっている。

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