安達視点の1番、黒沢視点の2番。歌詞に注目すべきワケ
「はじめては全部君がいい」の1番は主に安達視点、2番は黒沢視点となっているようで、運命の瞬間から動き始めたそれぞれの想いが綴られている。
黒沢の恋心を知るまでの安達のこれまでの日々が“ありきたりな日常”であるのに対し、黒沢の“曖昧な日常”という表現も言い得て妙である。ずっと無理をしてきた黒沢の世界が変わったのは、安達が心に触れてくれた日がきっかけだった。
アニメ第4話。安達が体調を崩して黒沢が心配して訪ねてきたとき、黒沢の優しさに助けられて思わず本音が出てしまった場面。卑下する安達に対して、安達と付き合う人は幸せだと黒沢は口にする。
デートしたり手を繋いだり何をするのもその人が初めてなんて、自分だったらめちゃくちゃ嬉しい。「安達の初めてが全部俺なんて絶対絶対全部大事にするのに」という黒沢の想い。安達のその相手は自分ではないと、心のどこかで諦めているのかなと筆者は思っていた。
けれど、2番の歌詞には“だけど君のはじめては僕がいい”とあって、報われない切なさを抱えながら安達との関係の進展を強く望んでいることも、歌詞全体を読んで改めて考えさせられる。切なくなる度にきっと、安達の言葉や笑顔に励まされてきたのだろう。
それが叶う関係になったときに、黒沢がいかに安達を大切にしようとしているかにも繋がっていく。安達が「全部の初めてをこいつとしてもいいかもしれない」と思えたのも、そんな黒沢の深い愛情があってこそだろう。根底にある安達の黒沢への信頼も伝わってくる。