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押井守原作の隠れた名作。悲壮感漂うハードボイルドアニメ

『人狼 JIN-ROH』(1999)

押井守監督
押井守監督Getty Images

【作品内容】

本作では史実とは異なる世界線が描かれる。第二次世界大戦の敗戦国・日本はドイツによる占領の後、国際社会への復帰を進めていた。そのなかで失業者と凶悪犯罪の増加、またセクトと呼ばれる過激派集団が生まれていく。それに対して政府は、高い戦闘力を持つ警察機関として「首都圏治安警察機構」通称「首都警」を組織し、戦闘部隊である「特機隊」を組成するのだが…。

【注目ポイント】

『人狼 JIN-ROH』は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』シリーズの監督・押井守が原作・脚本を手掛けた知られざる名作だ。監督を務めたのは『攻殻機動隊』で作画監督を務めた沖浦啓之。国内外で賞を受けるなど、批評面でも大成功した作品でもある。

「戦後まもない時期の混乱している日本」が舞台であり、終始シリアスな緊張感のなかで物語が進んでいく。この作品が鬱アニメと言われる理由は、残酷な結末にある。

主人公は首都警の戦闘部隊である「特機隊」のメンバーであり、殺人マシーンのようなキャラ・伏一貴。彼はある日、敵対している反政府組織「セクト」のメンバー・阿川七生を自爆に追いやってしまう。七生を忘れられない伏は、彼女の墓を訪れた際に七生の姉・圭と出会う。

それからたびたび二人は会うようになり、仲を深めていくが、実のところ首都警公安部・辺見が彼女の差し金だった。つまり圭はハニートラップのために伏に近づいていたのだ。しかし圭の心には本物の恋心が芽生え始めていた。伏にすべてを明かす圭。二人は結託して辺見を返り討ちにする。

ここからが悲しいラストシーンだ。伏は特機隊の塔部に「敵である圭を射殺しろ」と命令を受ける。伏は葛藤するも、彼女の腹部を撃つ。そして、むなしい表情を浮かべて物語は幕を閉じる。

この救いようのない結末が鬱アニメといわれる所以だ。しかし「これぞハードボイルド」ともいえる終幕でもある。もしこれがハッピーエンドだったら、殺人マシーンと化した伏の”悲哀”が薄れてしまうのではないだろうか。

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