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『虎に翼』と社会現象アニメの意外な共通点とは? 「視聴者をバカにしない」吉田恵里香の脚本はどこが凄い? 徹底解説&考察

text by 苫とり子

これまでの朝ドラとは一線を画していると各所で話題のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。脚本を手掛ける吉田恵里香は、これまで『ちぇりまほ』、『ぼっち・ざ・ろっく!』など、上質なエンターテイメント作品を生み出してきたヒットメーカー。今回は、脚本家・吉田恵里香の作品が多くの人に支持される理由を紐解いていきたい。(文・苫とり子)

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

『虎に翼』が女性たちに支持される理由

連続テレビ小説『虎に翼』第7週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

女性初の弁護士の一人で、後に裁判官となり、家庭裁判所の創設にも携わった三淵嘉子。彼女の半生をモデルにしたのが、伊藤沙莉主演の連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合)だ。

本作は、五黄の寅年に生まれたヒロイン・猪爪寅子(伊藤)とその仲間たちが、法曹界から男女平等の世を切り開いていく物語。とりわけ女性からの支持が厚く、放送開始から約2ヶ月しか経っていないにもかかわらず、すでに朝ドラ史に残る傑作として熱い視線が注がれている。

寅子たちが生きる昭和初期は今より遥かに男女格差が激しく、女性は結婚したら家事・育児に専念すべきとされていた時代。その上、婚姻女性は法的に「無能力者」とされ、あらゆる自由を制限されていた。

そういう“当たり前”とされていたことに「はて?」と疑問を呈する寅子は、女性に法律を教える日本で唯一の学校に入学。仲間たちと圧倒的に男性社会だった法曹の道に進むが、女性であるという、ただそれだけの理由で様々な困難に見舞われる。

1961年にスタートし、今回で110作目のNHK連続テレビ小説(通称“朝ドラ)。その多くが女性主人公であり、特に近年の作品ではあらゆる分野において先駆者となろうとする女性の奮闘や苦悩が描かれる傾向にある。

しかし、これほどまでにフェミニズムやシスターフッド(女性同士の連携)を物語の中心に据えた朝ドラはおそらく本作が初であり、“地獄”と表現される茨の道を傷だらけになりながら進む寅子たちの姿に、100年経った今でも生きづらさを抱える女性たちが勇気を与えられているのだ。

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